2013年3月4日月曜日

BIMとコミュニケーション

2D図面がBIMデータから生成されるべきであるという主張に対して、「2Dが必要なのになぜ3Dにしなくてはならないのか」という反論をよく耳にします。理に適っているように聞こえますが、実際はそれほど単純ではありません。

まず、自問自答してみましょう。そもそも何故、2D図面を作成しているのでしょうか。それは建物の計画や施工の指示等の情報を伝えるためです。設計者がクライアントに建物を説明するというシンプルなケースを考えてみましょう。頭に建物のアイデアがあり、その考えを共有したいと思います。ここでは最初から3Dで考え、クライアントにも3Dで伝えたいのです。しかしながら、コミュニケーションのプロセスの間に、全てを2Dに「翻訳」し、その後3Dに戻すというようなことが行われます。2Dへの翻訳においては、極めて大きな情報のロス、プロセスの「漏れ」があります。誤解が生じるのも無理はありません。

もちろん、コミュニケーションは設計者とクライアント間だけではありません。建設プロセスのあらゆるメンバーとあらゆる場所、あらゆる時間で行われます。建設プロセスにおいて、コミュニケーションが図面における全てのアクティビティの目的であるといっても過言ではありません。さらに言えば、コミュニケーションより大事なのは建設そのものだけだと言えるでしょう。これを考えてもう一度、図面がそのために作られているか、見直してみましょう。ただし、2Dをやめることは提案しているわけではありません。2D図面は過去千年もの間存在しており、今後も残るであろうと確信しています。しかし、現状の2D図面の全てがそう長く存在しないとも考えています。



図面については2つの側面に分けて考えることができます。まず一つ目は、「ハード図面」と呼ぶことにします。これは法的意味を持つ図面、確認申請に必要であり、契約および入札に必要な図面を指します。これは2Dから脱却するまでに相当な年月がかかるでしょう。法令や基準は2Dプロセスに基づいており、IT業界はそれらを変えるには早すぎる変化を遂げています。同様の早い変化を期待したいところです。

しかし、2D図面はその他にも多くの目的に使用されます。ここでは「ソフト図面」と呼びます。これらは社内でお互いに考えを説明するための図面や、デザインの意思決定を確認するための図面、品質を確保するための図面、等々です。これらは全て法令や財務的に2Dである義務があるわけではありません。これを3Dでコミュニケーションしてはどうでしょうか?全てを3Dとして確保することで、情報のロスを大幅に削減することができます。これを受け入れることで、BIMが活躍することになります。データ入力の煩わしさや、図面の整合性を確保するための面倒な作業が減り、さらにコミュニケーションの質が劇的に改善されます。

BIMを単純に2D図面生成ツールの代替えとしてのみ検証し、評価することは短絡的であると言えるでしょう。実際、BIMから2D CADソフトと全く同じ品質の図面を生成しようと努力する場合、あらゆるBIMアプリケーションは効率性において多少(人によっては多少ではないと仰るかもしれませんが)問題をいくつか抱えています。しかしここで考えて頂きたいのです。これだけが争点なのでしょうか?明らかにいくつもの大きなメリットをもたらすことを考慮すれば、社内の図面基準を柔軟に対応させる価値があるのではないでしょうか。

「木を見て森を見ず」ということわざがあります。細部にとらわれ、全体を見失うことです。比較的小さな図面の問題にとらわれ、それを言い訳に前進しないということは、正にこのことではないでしょうか。設計事務所および建設会社の意思決定者の方々が、そのようにならず、BIMの船に乗り遅れないようサポートして参りたいと思います。

一方で、もちろんですが、私たちはその「多少の問題」の修正に取り組んでいます...