2013年12月18日水曜日

日本の品質を世界へ

最近、ジャーナリストの方から面白い質問を受けました。「なぜGRAPHISOFTはそれ程までに、日本の要件を満たすことに労力を費やすのか」という質問です。年々、日本のお客様の要望を基に機能が追加されることが増え、ついには、大げさでもなく、ArchiCAD 17は日本の要求を基に作られたバージョンとなりました(ブダペストの開発者の間では、実際に「ジャパニーズバージョン」と呼ばれていました)。

その一つの答えは、まず日本に巨大な市場があるからです。BIMは通常、高学歴人口と高価な労働力を持つ国で発展する傾向にあり、日本はこのどちらも満たしています。また、保護されたビジネス環境ではないこともまた重要です。競争は公平であり、ソフトウェアのパフォーマンスとサービスのレベルのみが重要視されていると言えるでしょう。さらに、BIMはその性質上、設計施工プロセスにおいて、最もメリットが出やすいものです。そして、このメソッドが最も先進的かつ広く普及しているのも日本なのです。

これらすべては、GRAPHISOFTにとって日本が魅力的な市場である理由ですが、もう一つ面白い理由があります。私たちの経験で言われているのが、「日本なら間違いない」ということです。これはどういう意味でしょうか。

日本の建築のプロセス(ここでは、数十年にわたって発展してきた2Dのことを指します)は、非常に洗練されたものです。いくつかの側面は、確かに今のデジタル時代にそぐわないものもあり、変わるべきですが、私の考えでは、その多くは今後も残っていくと思いますし、さらに進化するべきだと思います。この日本の2D建築プロセスの高い精度と完璧な実施によって、日本の要求事項は世界で最も困難とされています。しかし、私たちにとってはむしろ逆です。もし、私たちがそれを満たすことができれば、その機能を世界中で適用しても上手くいくということです。日本にとって十分なものが出来上がれば、世界中どこでも問題ないと言えるでしょう。ちなみに、他の国で十分でも、日本では上手くいかないということも多く学びました...

その結果、日本の要求に基づいて開発したいくつかの機能が、他の国で受け入れられてきたという事実があります。すでに、私から「通り芯」のエピソードを聞いたことがあるかもしれませんが、これはもともと、日本語バージョンのためだけのものでしたが、やがて他のArchiCAD言語バージョンにも搭載され、後に世界中で使われるようになりました。アメリカのユーザーが、ArchiCADのグリッドツールを使用する際には、実際に古い日本の方式を採用しているのです...!

もちろん、ArchiCAD 17で搭載された機能は、日本のためだけに開発されたものではありません。私たちが行ったのは、BIMの非常にコアな部分を強化し、問題を解決したことです。これによって、より簡単に詳細なドキュメントの作成が可能になり、より正確な数量計算が行えるようになりました。これは、例えばアメリカやドイツ、その他の国のArchiCADユーザーが、2Dのアウトプットの際に問題を抱えていないということではなく、どちらかと言えば、詳細な問題には目をつぶり、他の事に重点を置いているのです。しかし、最新のお客様のアンケートでは、実際にArchiCAD 17で大幅に生産性が向上したという事実が示されています。当初のArchiCAD 17の評判(それほど新しい機能がないのでは)は、徐々に興奮へと変わってきました。最高のアップグレードだという声も多いです。第一印象よりも、品質やその他様々なことを実感しての結果だと思います。

今回が今年最後の投稿です。とてもエキサイティングな年でしたし、成功した年だと言えるでしょう。成功の一つの側面は、ブダペストと日本の同僚の努力によるものですが、さらに大きいのは、私たちの技術を信じて頂いている、お客様やパートナーの皆様に、さらに努力する機会を頂いたことによるものです。この場を借りて、心からお礼を申し上げます。そして、来年はさらに努力し、飛躍することを誓います。
Merry Xmas and Happy New Year!

今年も熊手を飾りました!

2013年12月4日水曜日

ある不思議な出会い

私がPechaKuchaNightを愛する理由は数多くありますが、その中でも、新しい人に出会えるということが一番です。毎回、必ず新しく面白い人に出会うのです。先月も例外ではありませんでした。しかし非常に驚いたのは、出会ったのが私たちの競合にあたる企業のエグゼクティブだったのです。共通の面識がある建築家の友人が、「彼がベンツェで、同じく日本のBIMの普及に忙しい人ですよ」と紹介してくれました。交流の場でしたので、名刺を取り出してビジネスライクに自己紹介をするよりも、握手をしながら名前を言いました。そのときに、冗談めかして「私は、ある競争他社で働いているんですよ」と言いました。すると、彼は「へぇ、競合会社があったんですね」と返しました。

ビジネスとして考えれば、市場にたった一社でいることはその会社にとって多くのメリットがあります。誰でも、競合することなく、日々クライアントからの要求を満たそうと奮起することなく、楽にビジネスすることを夢見ることがあるでしょう。市場を独占するということは、好きなように価格を設定できるということで、利益の多くを再び開発費に回す必要もなく、それほど努力せずに心地よく成長を楽しむことができるということです。

しかし、本当でしょうか?私はそう思いません。かつてGRAPHISOFTの創設者であるBojár氏から学んだことがあります。それは、競合することは良いことだということです。私たち自身をより強く、向上させ、毎日努力し続けなければならないということによって、お客様により良い製品が提供できるようになる、と。結局のところ、ビジネスはただ単に何かを買うためにお金を稼ぐためだけではなく、誇りに思えるものを作り上げることではないでしょうか。

私がその大物の人物に言いたかったのは、「そんな状況を変えようと必死なのですよ」ということでした。その後は、東京がいかに素晴らしい都市になったか、そして、もっと頻繁に来日するべきだったというようなことを好意的におしゃべりしました。次回に会うときは、より詳しい情報が知らされているのは間違いないでしょう...

2013年11月22日金曜日

日建設計との契約 - 皆さんにとってのメリットとは?

ご覧頂いている通り、GRAPHISOFTは日建設計と戦略的パートナーシップを締結し、「BIM Competence & Research Center」を東京とブダペストに設立することとなりました。それぞれの都市にチームを結成します。GRAPHISOFTはプロダクトデザイナーと開発者を日建設計に派遣し、共同作業することで、BIMの実施を継続的に支援致します。しかし、さらに重要なのは、私たちが日建設計のプロセスをより深く理解し、よりシームレスなワークフローを構築するために何ができるかを考えることです。ブダペストチームは開発者で構成され、彼らの役割は、東京チームが導き出した方向性を実現することです。
調印式の様子
ビクター・オルバーン首相立会のもと、調印を交わす
日建設計 代表取締役社長 岡本 慶一氏、GRAPHISOFT CEO Viktor Varkonyi

「良かったですね、日建設計にとって良いカスタムソフトができるのですね。でも、私にとって何かメリットはありますか?」と思われるかもしれません。実際に、想像以上のものがあります。
まず、この契約は、カスタム開発ではないということです。この協力による成果の全ては、ArchiCADおよびその他GRAPHISOFT製品の商用版(正規版)に反映されることになります。なぜ日建設計は他社にこの共同作業の成果を共有する必要があるのか、と不思議に思われるかもしれません。日建設計は、カスタム開発をするということが、ソフトウェアの能力を高める健全な方法ではないということを十分に理解しています。カスタム開発をすることによって、ソフトウェアのコードは2つに分岐され、双方共に別々に管理し続ける必要があり、従って、開発者にとっての効率性の大きな損失、あるいはクライアントへの大きな費用の負担が発生します。BIMの考えと同じように、コードが一つに保たれれば、より少ないカスタマイズで解決でき、日建設計にもメリットがあるのです。したがって、共同作業の結果はより良いGRAPHISOFT製品の形となって現れ、日本、そして該当する場合には、世界中で共有されることとなります。
2つめに、日建設計は非常に高度なワークプロセスを確立しており、設計事務所の規模に関わらず、大きなメリットがあるでしょう。つまり、私たちがArchiCADを日建設計のニーズに合わせるように調整することで、日本さらにはアジアの他の企業でも、より有用である可能性が高いということを意味します。シンプルに言えば、日建設計にとって良いことは、あなたにとっても良いこと...となるでしょう。
そしてさらに言えば、この長期的なパートナーシップの締結によって、GRAPHISOFTの注目が日本に集まることは間違いないでしょう。日建設計から受け取るインプットによって、プロダクトデザイナーや開発者がさらに日本市場の特殊なニーズについて検討することになることを確信しています。ArchiCADの利用が現在のようなペースで成長すれば尚更です。

そうならない理由などないでしょう...

2013年11月12日火曜日

日本からアジアへ

既にご存じかもしれませんが、GRAPHISOFTの組織にいくつか変更がありました。GRAPHISOFT SECEOであるViktor VarkonyiNemetschek AGのエグゼクティブボードの一員となり、私はアジアのVP(バイスプレジデント)として、アジア市場全体を統括することになりました。Viktorの昇進について強調しておきたいのは、彼は今後もGRAPHISOFT SECEOの立場も継続するということです。従って、Nemetschek AGの意思決定におけるGRAPHISOFTの影響力は確実に大きくなるでしょう。私の昇進については、世界の人口の30%を占める国々(インドは本社の管轄)、そして25%GNPを誇る市場を一任されることは、大変名誉なことですが、この昇進は私個人の実績によるものというより、グラフィソフトジャパンの功績が評価された結果です。それはもちろん、お客様やパートナー様が私たちを信頼して頂き、サポートして頂いたおかげです。この場を借りて、改めて心から感謝申し上げます。4年前は、アメリカの巨大な企業に対して、今よりも小さいハンガリーの会社にそれほど信頼のおける状況にはなかったと思います。

アジアに関しては、去年の7に私たちの取り組みについて書きました。それ以来、シンガポールオフィスを設立し、中国での存在感をより一層高め、また、数カ国でさらに強力なパートナーとの提携を行うなど、様々な発展がありました。しかし、さらなる強化が必要です。今後数年で、競合他社の後を追うのではなく、ヨーロッパと同じように、強力な市場シェアを確立することが極めて重要になります。

良いニュースは、先日開かれたアジアパートナーカンファレンス(今年はシンガポールで開催)で、私たちのパートナーはさらに強化され、お客様のサポートが十分にできる状況にあることが明確だったことです。それによって、来年はこの地域で現実的に30%以上の成長が可能だと考えています。特に、BIMの発展がかなりの勢いで拡大し始めている韓国、中国、シンガポールでは大きなチャンスがあります。

これらの国々の状況は4年前の日本の状況と似ているということを、数名から伺いました。多くの企業がBIMソフトを所有していると主張しますが、その使い方について尋ねると、たいていの場合、プレゼンテーションの目的や、通常の2Dワークフローに付加するプロセスのみが行われていることがほとんどです。確認申請の一部としてBIMモデルの提出が求められるシンガポールでさえ、設計図書は通常、2D CADで作成され、BIMモデルの作成は作業量の増加としてみなされがちです。当然のことながら、そういった企業には、日本のお客様のようにBIMモデルから図面を生成することを推奨するようにアプローチを始めました。
最後に、この件は日本のお客様やパートナーの皆様にとってはどういう意味になるでしょうか? 私が日本について、あまり気にしなくなるということでしょうか?もちろん違います。グラフィソフトジャパンの代表取締役としての立場も継続します。今よりは離れることが多くなると思いますが、まだまだやることはたくさん残っていますので、今後も日本が一番のフォーカスになります。幸いにも、私たちのチームは非常に頼もしく、自立しているので、最近では、実際のオペレーション業務にかける時間はかなり少なくなりました。しかし間違いなく、過去数年間で行ってきた道筋をそれることだけはありえません。それは、ユーザーの皆様の発展をサポートすることに集中することです。

そして、それがまさにアジアのオペレーションにおいても適用したいと考えていることです。「日本式」はアジアでも大いに活用できると考えています。それは、単に同じ販売戦略を適用するということよりも、信頼性の高い顧客サポートを提供し、それぞれの国に合ったノウハウを提供し、お客様の声を積極的に伺い、アジアの要求に集中するように本社を説得することです(基本的にアジアの要求は日本のものとかなり似ています)。私の目標の一つは、今後4年間で、皆さんがアジアに出張したときにArchiCADユーザーに出会う機会をさらに増やすことです...

2013年8月20日火曜日

ダレン・ティムズ - オーストラリアのBIMのチャンピオン

既に今年のArchiCAD製品発表会のプログラムをご覧になったかもしれませんが、今年も海外からゲストスピーカーをお招きすることになっています。今回は、オーストラリア最大級の組織設計事務所、Rice Daubney社のプリンシパル、ダレン・ティムズ氏をお招きしました。2000年代初め、私がプロダクトマネージメントのVPとしてGRAPHISOFT本社で勤務していた頃、当時は大規模組織のユーザーはまだ少なく、同社の名前を頻繁に耳にしていましたが、残念ながらお会いする機会はありませんでした。しかし、ついに昨年ブダペストで開催されたKey Client Conferenceで彼のプレゼンテーションを見ることができました。そして、そのプレゼンテーションを見た瞬間に、彼を東京に招待してユーザーの皆さんにご覧頂かなくては、と思いました。

Rice Daubney, Principal
ダレン・ティムズ氏
実は、Rice Daubney社は本格的なBIMを始めるのにかなり時間がかかった企業です。90年代にArchiCADを購入されましたが、数年間は2Dとしてのみ使用され、従来の方法で図面を生成するためだけに使っていました。ジュニアスタッフのメンバーがArchiCADの3D機能について、ダレン氏に繰り返し尋ねてきたとき、彼は3Dパッケージを2D製図用にだけ使うなんてもったいない、という考えが浮かんできました。一部の下請け業者と3Dデータを交換する可能性を議論し始めると、彼らの反応は非常に前向きなものでした。その時、BIMこそがこれからのやり方だと確信されたそうです。

それから「BIMの旅」の道のりが始まり、Rice Daubney社はプロジェクトでBIMを活用し、調整や効率の改善を続けました。そして、ほんの数年で彼らのBIMの実施は誰にも負けない程、高いレベルへと発展しました。ARKプロジェクトでは、オーストラリアで高層ビルとしては初となる、BIMでの設計を担当し、維持管理ソフトウェアと共に構築されたモデルを引き渡しました。また、特に医療施設の分野では正確なプロジェクトの調整が重要となりますが、これもRice Daubney社の得意とする分野です。オーストラリア、クイーンズランドの巨大な大学病院、サンシャイン・コースト大学病院のプロジェクトでは、完全にBIMで生成されたドキュメントを作成されており、私自身も過去に見たことがないほどのスケールです(このプロジェクトは東京会場での彼のプレゼンテーションでご覧頂けるでしょう)。BIMモデルは、プロジェクト関係者間における継続的な3Dベースでの意思の疎通が可能になります。これによって、合意形成に達するまでの時間を劇的に削減することができます。これも医療施設のプロジェクトにおいては非常に重要な項目です。
The ARK project
ダレン氏は今回が初来日となりますが、兼ねてより一設計者として日本に訪れたいと思っていたそうです。訪問中の忙しいスケジュールの合間に、東京のエキサイティングで新しい建築をチェックするのを楽しみにされています。ただし、ArchiCADのユーザーの多くの方が国際的なBIMの実施への関心を寄せる今、観光の時間はあまりないかもしれませんが... 

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9月3日にJPタワーで開催されるArchiCAD製品発表会でダレン・ティムズ氏の講演を是非、ご覧ください。定員により、締切が近づいておりますので、お申込みは是非お早めにお願いします!

2013年8月7日水曜日

BIMハイウェイの穴ぼこ

私は常に、BIMソフトでの「ワークアラウンド」が悪だと信じてきました。これは、本来時速100kmで走り抜ける高速道路を、穴ぼこがあるために時速20kmで通り抜けなければならないようなものです。その結果、A地点からB地点まで高速道路で行けるにも関わらず、一部の人々は旧国道で行くこと(2Dのことを指します)を選ぶことになるのです。そのほうが、イライラせず、予測可能であるからです。

BIMにおいて、 「穴ぼこ」のほとんどは2D図面の生成に関連しています。これは主に、2D図面の基準がBIMデータを考慮して作成されていなかった為、ロジックが根本的に異なり、そのためにアルゴリズムを絞るのは非常に複雑で困難です。しかし、製図基準はそのものとして存在し、当然、これに合わせなければなりません。しかし問題なのは、完成度を求めれば、そのために様々な「ワークアラウンド」を余儀なくさせられるのです。ワークアラウンドは以下の3つの理由で悪だと考えています。

まず一つ目に、学ぶのが難しいということです。明白というには程遠いやり方をいくつも覚えなくてはならないのです。そのような方法以前に、そもそもBIM自体がそれほど単純ではありません。そんなものが果たして必要なのでしょうか? 残念ながら必要なのです。なぜなら、そうしないと仕事が完成しないからです。

2つ目にソフトウェアを標準化するのが難しいことです。たいていの場合、ワークアラウンドは完璧ではありません。様々なデメリットも存在します。従って、どれが最適の方法であるかという確証がありません。結果として企業は(あるいは企業内のある人達は)、様々なソリューションを選び、ワークフローを標準化するのが難しくなり、通常のカリキュラムでトレーニングすることも難しくなります。

3つ目が最も重要です。ワークアラウンドはBIMモデルを台無しにしてしまいます。BIMモデルの自然なモデリングから様々な方向にそれると、数量が正しく計算されている唯一のBIMモデルが汚染され、確かなものではなくなっていくのです。正しい2D表現のために加筆するところから始まり、100%数量が信用できなければ、数量のために使うのを諦めるか、2つのBIMモデルを作成してどちらも維持するかのどちらかです。どちらの選択肢も良いものとは言えないでしょう。BIMモデルの費用対効果で考えても合理的とは言えず、多くの人がその為の価値を疑問に思うでしょう。

いくつかのワークアラウンドは、確固として確立されており、その誘惑(あるいはかなりのプレッシャーもあるでしょう)に耐えなければなりません。例えば、詳細が3Dで上手く表現できない為、簡単に編集できる2Dで解決してしまうことなどです。しかし、2Dで簡単に解決したように感じてしまうのですが、かつてのジレンマに再び陥ることになります。数量はどうなるのか?ということです。これが、私たちが簡単な解決である2Dのワークアラウンドを拒み、ArchiCADのワークフローを改善することにした理由です。BIMの根本的な価値である3Dに立ち戻ったのです。3Dで問題を解決できれば、どこで断面図を切っても問題なく、建物全体で解決できるということです。そして、数量計算のために別々のモデルを管理する必要はありません。BIMにおいて目新しいものではありませんが、私たちの開発者がArchiCAD 17で実現した細部のレベルを適用された人はいないでしょう。

結果として、ArchiCAD 17は1:50レベルには十分な2D図面、さらにはそれ以上をも生成できると確信しています(早期テストユーザーの方も含め、確認して頂いています)。ワークアラウンドを排除することによって、新しいBIMワークフローは、よりシンプルになり、より高速に、より効率的になります。話がうま過ぎると思いますか?是非、あなた自身の目でご覧になってはいかがしょうか。9月3日(火)東京と、9月6日(金)大阪にて、ArchiCAD 17の製品発表会にてお見せしたいと思います。 高速道路は舗装されています。旅を始めましょう!


Tokyo 
http://www.graphisoft.co.jp/community/event/ArchiCAD17_conference_tokyo.html

Osaka
http://www.graphisoft.co.jp/community/event/ArchiCAD17_conference_osaka.html

2013年8月2日金曜日

BIMは細部に宿る

グラフィソフトジャパンにとって、夏はいつも忙しい季節です。通常、秋口に来るArchiCADの新バージョンリリースの準備のためです。次のリリースであるArchiCAD 17では、日本にとって非常に重要であるため、今回は特に忙しい夏を過ごしています。新しいバージョンがどのようなものであるか、楽しみにされていると思いますが、その前に少し、過去数年のテーマを振り返りたいと思います。

グラフィソフト、ArchiCADは毎年、単にいくつもの新機能を追加してリリースするだけではなく、戦略的に特定のテーマを掲げ、包括的なコンセプトとしていることはご存じかと思います。この方法によって、開発のプログラミングもより効率的になります。また、インターフェースやワークフローを絶えず変化させてしまうことは、ユーザーの皆さんに非常にストレスを与えてしまうことにもなり得ます。それでは、ここ数年の開発テーマの概要をご紹介します。

ArchiCAD 13から始めましょう。というのも、この年(2009年)が、私が日本に戻ってきた年であり、ArchiCADの製品開発に再度関わり始めた年なのです。ArchiCAD 13は「チームワーク」のバージョンとしても知られています。最も重要な機能は生まれ変わったチームワークの機能であり、まさに革新的と言うにふさわしいものでした。このバージョンがまさに、「チームワーク」の機能が必須となる大規模組織に向けた、可能性の扉を開いたものでした(当時、日本ではArchiCADは比較的小規模の設計事務所で主に使われていました)。

2010年では、ArchiCAD 14で再び「コラボレーション」にフォーカスしました。しかし、ここではより広い意味で様々な分野との連携を目指しました。結果的に、IFCのインプット、アウトプットはより強力になり、「OPEN BIM」のムーブメントが生まれ、このコンセプトは広くにわたって受け入れられるようになりました。



ArchiCAD 15と16のテーマは、どちらも3Dモデリングにフォーカスしたものとして、少し似ています。モルフツールの導入により、建築家の設計における自由な発想がBIMによって阻害されるという懸念を一掃しました。



振り返っても、非常に素晴らしいリストで、ブダペストの開発者たちも優れた仕事をしたと思います。しかし、一つ重要なエリアが欠けているのです。それは2D図面の生成についてです。これについては、大きな改善はArchiCAD 12以降ありませんでした。グラフィソフトは2D図面の生成を包括的にターゲットとしています。これが今のところ、BIMデータの最も重要なアウトプットです。また、モデルから自動的に切り出したドキュメントが基本設計レベルでは通用するとしても、実施設計や、特に施工図には十分だと言えないということが、多くの人がBIMはまだ発展途上だと言う理由です。

ある人たちからは、これを実現するのはあまりに困難であり、このレベルに挑戦するのではなく、2Dソフトの領域として残しておく方が賢明だと助言されたりもしました。しかし、ドナウ川の頑固な同僚たちは、そう簡単にあきらめる連中ではありません。ArchiCAD 17では非常に画期的な技術を実現しました。新しい優先度ベースの接続により、平面図と断面図のどちらでも、自動的に完璧な納まりを実現します。

ドイツの有名なモダン建築家ミース・ファン・デル・ローエは、かつて「God lives in the details -神は細部に宿る-」と言いました。建物はあらゆる細部まで正確で美しくなければならないという意味です。これはBIMデータにも同じことが言えます。細部の納まりまで正しく入力されなければ、全体のデータとして完全なものにはならないということです。この考えから、新しいArchiCAD 17ではこの言葉に敬意を表し、スローガンとして「BIM lives in the details - BIMは細部に宿る-」としました。

ArchiCAD 17ではドキュメントワークフローにおいて、徹底的な改善がなされました。新しいワークフローによって、この先10年は、今年の2013年が、ついにBIMデータからの実施設計図・施工図の生成が現実となった年として記憶されることとなるのではないかと思います。来週は、どのようにこのバージョンが実現されたかについて書きたいと思います。

2013年6月26日水曜日

BIMで仕事を見つけるには?

私たちは、設計事務所の方々にBIMの利点を説明します。効率化、整合性、調整の問題の解決などです。ある人にそれを伝えていると、彼は熱心に耳を傾けますが、彼の目を見るとどこか腑に落ちない様子が見て取れます。そして、彼は尋ねました。「素晴らしいことですが、私にとってはそれが問題ではないのです。それ以前の話です。私の問題は、十分な仕事がないということです。それをなんとかできますか?」

建築家にとって、人脈や推薦などを通じて仕事を得るのは最も簡単な方法ですが、それが必ずしも上手くいくわけではありません。そして特に、過去の作品が少ししかない(あるいは全くない)、若手デザイナーはそのように仕事を獲得するのは非常に困難です。残る方法はコンペです。あらゆるタイプ、規模のコンペがあり、これらは事務所の規模や、建築家の経験などに左右されず、誰にとっても平等なものです。この場合、重要になるのはコネや名声、評判ではなく、作品のクオリティのみです。

問題は、建築のコンペはリスクがあるということです。非常に経験豊富な事務所であっても、勝率は30%といったところでしょう。したがって、結局は数の問題となるのです。より多くのコンペに参加すれば、勝ち取れる案件が増えることとなるでしょう。しかし、コンペに参加することは多くの労力を必要とし、たとえ勝ち取ったとしても黒字になることを保証するものではありません。もし、長期間に及んで負け続ければ、多くのお金を無駄にし、致命的な状況に追い込まれることになるでしょう。

勝率を高めるにはどうしたらよいでしょうか?答えは簡単です。効率を高め、BIMモデルを使用してより多くのコンペに参加することです。BIMを使えば、信じられない程に迅速かつ効率的にコンペに参加することができます。モルフツールを使えば、難なくマスモデルを作成することができ、それと同時に各フロアの床面積を割り出すことができます。デザインが決まれば、そのマスモデルをスラブ、壁、柱などの適切なBIMモデルに変換させます*。結果として、レンダリングとアニメーション用に使える3Dモデルに加え、1:200または1:100レベルで自動的に生成された平面図、断面図、ファサードが手に入ります。そして、モデルへのあらゆる変更は、図面に自動的に反映されます。つまるところ、BIMとはこういうものなのです。

これら全ては、厳しいラーニングカーブを伴うものではありません。数日のトレーニングと数週間の実践で行うことができます。現在では、BIMは設計の初期段階で、実質上完璧に運用することができます。BIMをコンペに利用することによって、入札のための時間や工数を劇的に削減することができます。ArchiCADのユーザーの一部は、リソースを3分の1に削減することができると主張されています。これは、今までと同じ労力で3倍のコンペに参加できるということ、つまり、勝率が3倍になることを意味するのです。最近のユーザー事例の一つで、横松建築設計事務所の横松氏はこのような戦略について語っており、以前より遥かに多くの仕事を獲得されています。

仕事を獲得すれば、基本設計・実施設計におけるBIMのメリットを得ることができるでしょう。

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*この方法はArchiCADのみで行うこともできますが、生活産業研究所のすばらしいアドオン「MassPlan」を使うことで、自動的に行うことができます。

2013年3月4日月曜日

BIMとコミュニケーション

2D図面がBIMデータから生成されるべきであるという主張に対して、「2Dが必要なのになぜ3Dにしなくてはならないのか」という反論をよく耳にします。理に適っているように聞こえますが、実際はそれほど単純ではありません。

まず、自問自答してみましょう。そもそも何故、2D図面を作成しているのでしょうか。それは建物の計画や施工の指示等の情報を伝えるためです。設計者がクライアントに建物を説明するというシンプルなケースを考えてみましょう。頭に建物のアイデアがあり、その考えを共有したいと思います。ここでは最初から3Dで考え、クライアントにも3Dで伝えたいのです。しかしながら、コミュニケーションのプロセスの間に、全てを2Dに「翻訳」し、その後3Dに戻すというようなことが行われます。2Dへの翻訳においては、極めて大きな情報のロス、プロセスの「漏れ」があります。誤解が生じるのも無理はありません。

もちろん、コミュニケーションは設計者とクライアント間だけではありません。建設プロセスのあらゆるメンバーとあらゆる場所、あらゆる時間で行われます。建設プロセスにおいて、コミュニケーションが図面における全てのアクティビティの目的であるといっても過言ではありません。さらに言えば、コミュニケーションより大事なのは建設そのものだけだと言えるでしょう。これを考えてもう一度、図面がそのために作られているか、見直してみましょう。ただし、2Dをやめることは提案しているわけではありません。2D図面は過去千年もの間存在しており、今後も残るであろうと確信しています。しかし、現状の2D図面の全てがそう長く存在しないとも考えています。



図面については2つの側面に分けて考えることができます。まず一つ目は、「ハード図面」と呼ぶことにします。これは法的意味を持つ図面、確認申請に必要であり、契約および入札に必要な図面を指します。これは2Dから脱却するまでに相当な年月がかかるでしょう。法令や基準は2Dプロセスに基づいており、IT業界はそれらを変えるには早すぎる変化を遂げています。同様の早い変化を期待したいところです。

しかし、2D図面はその他にも多くの目的に使用されます。ここでは「ソフト図面」と呼びます。これらは社内でお互いに考えを説明するための図面や、デザインの意思決定を確認するための図面、品質を確保するための図面、等々です。これらは全て法令や財務的に2Dである義務があるわけではありません。これを3Dでコミュニケーションしてはどうでしょうか?全てを3Dとして確保することで、情報のロスを大幅に削減することができます。これを受け入れることで、BIMが活躍することになります。データ入力の煩わしさや、図面の整合性を確保するための面倒な作業が減り、さらにコミュニケーションの質が劇的に改善されます。

BIMを単純に2D図面生成ツールの代替えとしてのみ検証し、評価することは短絡的であると言えるでしょう。実際、BIMから2D CADソフトと全く同じ品質の図面を生成しようと努力する場合、あらゆるBIMアプリケーションは効率性において多少(人によっては多少ではないと仰るかもしれませんが)問題をいくつか抱えています。しかしここで考えて頂きたいのです。これだけが争点なのでしょうか?明らかにいくつもの大きなメリットをもたらすことを考慮すれば、社内の図面基準を柔軟に対応させる価値があるのではないでしょうか。

「木を見て森を見ず」ということわざがあります。細部にとらわれ、全体を見失うことです。比較的小さな図面の問題にとらわれ、それを言い訳に前進しないということは、正にこのことではないでしょうか。設計事務所および建設会社の意思決定者の方々が、そのようにならず、BIMの船に乗り遅れないようサポートして参りたいと思います。

一方で、もちろんですが、私たちはその「多少の問題」の修正に取り組んでいます...