2012年12月21日金曜日

失って気づく大切さ

私たち人間は、なくなって初めて気づくことがあります。お腹が空けば食べ物の有難みを感じ、家から離れればホームシックになり、失って初めてその大切さに気づきます。BIMもまた、例外ではありません。

最近、あるBIMマネージャーの方から興味深い話を聞きました。彼のチームでは新しいBIMプロセスに様々な問題を抱えていました。初めてのBIMプロジェクトではほとんど全てに不満がありました。従来の2Dシステムと異なるショートカットキー、モデリング機能の制限、不正確な包絡によって発生する余剰作業、そして3Dプロセスのスピードが予想より遥かに遅かったことなど。それでもなお、プロジェクトは進み、最終的には成功する形となり、次のプロジェクトが開始されることとなりました。

次のプロジェクトでは前回より円滑に進みましたが、プロジェクトのある時点で、主要メンバーの数人がチームを離れることとなり、2Dに戻らざるを得ない状況になりました。そして、その時のメンバーの数名は安堵の息をつきました。「ようやく苦しい作業が終わった!これですぐにプロジェクトが完成できる...」と思いましたが、実際に慣れ親しんだ2Dプロセスに帰ってくると、思った以上に面倒なものであることに気づきました。長く忘れていた様々な問題に改めて気づきます。平面図と断面図の整合性の問題が再び顕在化し、品質には明らかな問題がありました。建具表は手動で作成しなくてはならず、そして、あらゆる設計変更の度に全ての図面を更新しなくてはなりません。なんて面倒なのでしょう。そしてもちろん3Dではないため、コミュニケーションも円滑にはなりません。クライアント、エンジニア、役所ですら2Dの図面だけではイメージの共有ができません。この時初めて、BIMプロセスが完璧でないにしても、2Dよりは既に明らかに優れていることに気づきました。

もちろん、私たちGRAPHISOFTにとってこの話の教訓は「結果的に問題なく進んでいるから安心」ではなく、「なぜ、あるユーザーにとってはBIMに切り替えるのがそれ程難しいのか」という課題の解決です。「変化はどんなものであれ、難しい」と片付けてしまうわけにはいきません。3Dへの移行を誰でもスムーズに、より簡単に行えるように必死に取り組まなくてはならないことを認識しています。そして、今年はお客様から数多くの要望を伺い、ハンガリーの開発チームと調整をして参りました。この様に日本の要望を取り入れたBIMツールとして、常に進化したArchiCADをご提供してまいります。来年もお楽しみにして頂ければと思います。

忙しい年末ですが、体に気をつけてお過ごしください。
Merry Christmas and a Happy New Year!

2012年11月16日金曜日

Key Client Conference, Day 2

2日目のカンファレンスの内容についてお伝えする前に、少し楽しい部分をお話しましょう。国際カンファレンスでは毎回、開催国の文化の一面に触れています。ハンガリー、ブダペストは様々な面がありますので、短い開催期間の中で何をお見せするかは、いつも悩ましい問題です。前回すでに、屋根テラスで行われたカンファレンスのオープニングパーティについてご紹介しました。2日目の夜は、ブダペストで最も美しい建物の一つ、ブダペスト民族博物館(旧最高裁判所)で「祝賀ディナー」が行われました。巨大な19世紀のホールで、有名なトカイ地方産のワインと共に素晴らしいディナーを堪能しました。さらには、有名なハンガリーの作曲家フランツ・リストの作品を奏でる生のピアノコンサートが行われ、皆が感嘆されていました。
民族博物館での祝賀ディナー 
2日目は市内のバスツアーもありました。定番のコースを回るのではなく(おそらく参加者のほとんどの方は個々に市内観光を終えていたでしょう)、このツアーは新旧の建築を巡るものでした。ブダペストには美しい建築が数多く存在します。ツアーの最後にバスはGRAPHISOFT Parkに到着し、ArchiCADのコードがまとめられている場所をご覧頂きました。また、スティーブ・ジョブズ氏と共に写真を撮る機会もありました(正確には彼の銅像と共に)。この銅像は、80年代初期のGRAPHISOFT創業期に極めて重要な影響を与えた人物である同氏を称え、死後直後に建てられたものです。
スティーブ・ジョブズとのツーショット
それでは、ここから本題です。2日目は、施工プロセスにおけるBIMについてでした。大林組の近藤氏によるプレゼンからスタートしました。非の打ちどころのない英語で進められ、同社の「スマートBIMコンストラクション」と呼ばれる取り組みをご紹介頂きました。近藤氏は、施工プロセスの各フェーズにおいて、BIMがどのような役割を果たすかを、非常に丁寧に実プロジェクトの例を用いながら説明されました。プレゼンの最後に、「スマートBIMクラウド構築」のアライアンスについて触れ、他企業の参加を受け入れるものであることを強調されました。

続くプレゼンターは、日本でも良く知られるフィリピンのAIDEA社のジョジョ・トレンティーノ氏です。AIDEA社は設計事務所であり、建設会社ではありませんが、 施工フェーズでも建築プロジェクトに緊密に協力しています。ジョジョ氏は簡単に「AIDEA社の歴史」を紹介し、フィリピンの中規模の設計事務所がBIMの技術を最大限に活かし、どのように現在のような収益性の高い、世界トップ100にランクインする建築設計事務所に成長したかを説明されました。AIDEA社は、現在すでに170名もの設計者を採用しており、「バーチャルデザインコンストラクション」としてIT技術の可能性を十分に活用し、インテグレーテッドプロジェクトデリバリー(IPD)と呼ばれるプラットフォームによって、施工プロセスにおける「運転席」を設計事務所のもとに取り戻すことができるということを表しました。
BIMによって劇的な効率化を遂げたAIDEA社の成長を表すスライド
3番目のプレゼンターは、こちらも見覚えのある方が多いでしょう、ポルトガルのMota-Engilからアントニオ・メイレイレス氏です。アントニオ氏のプレゼンテーションは、8月に行われたArchiCAD 16新製品発表会の時のプレゼンに近いもので、同社が採用するBIMの使用方法、それによって得られるメリットをご説明頂きました。このメリットについては、ただの概算ではなく、内部監査に基づく確かなデータで実証されているということでした。同社のBIMへの非常に意識的かつ実用的なアプローチには、今回も大変感銘を受けました。彼らは、実際にBIMモデリングのコストを認識しているため、メリットのある範囲のみモデルを作成しているのです。(以前の記事を参照
BIMの期待値に対するMota-Engil社の導入アイデア
続いて、イギリスのBond Brian Architectsからロブ・ジャクソン氏です。同社の紹介から、BIMによる成果をお話頂きました。また、イギリスにおけるBIMの状況や、イギリス政府の先4年間の計画による、BIMの建設業界への適用などについて詳しくご説明頂きました。イギリスでは、サスティナブルデザインとBIMデータのファシリティマネージメントへの利用に非常に重点が置かれているようでした。国によってBIMのアプローチ方法の違いを見るのは非常に興味深いものでしたが、どうもプレゼンターはイギリスのBIM標準の詳細を説明することに没頭しているようでした。今回のカンファレンスは限られた地域のトピックよりも、ワールドワイドのディスカッションであるべきだと感じましたが...

最後に、パネルディスカッションが再び行われました。2社の設計事務所と2社のゼネコンの代表者によって行われ、ディスカッションは主に、それぞれの会社における様々な要件やBIMを利用して両者の協力をどのように向上できるかなどを議論されました。このディスカッションで「最も良い発言をした」として架空の賞を授与するとすれば、アントニオ氏になるでしょう。「ヨーロッパの危機はMota-Engil社のBIMの取り組みにどのような影響を与えましたか?」という質問に対し、「Crisis is good, it makes you stronger!(危機は良いものです。それによって強くなるのです)」という驚きの答えでした。彼がここで意味したのは、物事が順調に進んでいる時には、変化に対して消極的ですが、問題がある時には、より賢くならなくてはならず、より限られたリソースあるいは薄利の状態で、より優れた結果となる方法を導入しなくてはならないということでした。「そしてまさに、BIMがそれをもたらしました」と付け加えました。これは私たち日本にとっても非常に貴重なアドバイスだと思います!
真剣に聞き入る多くのオーディエンス
ドナウ川でボートに乗らなければ、ブダペストの滞在を完全に満喫したとは言えないでしょう。美しい灯りに灯された街のクルージングという、とっておきのイベントを最後の夜に残しておきました。これは、誰もが一生のうちに少なくとも一度は経験するべきだと思います。
ドナウ川からの国会議事堂の夜景

2012年11月13日火曜日

GRAPHISOFT Key Client Conference 2012

穏やかな秋の夜、ブダペストの屋上テラスにて、カクテルと共にカンファレンスのオープニングパーティが始まりました。非常に素晴らしかったのは、テラスから「ArchiCAD 12 のビル」(ArchiCAD 12 のパッケージに使用された建物)が見えたことです。ほろ酔いと興奮がありつつも、リラックスした雰囲気に包まれ、27カ国から125名ものゲストがお互いに古くからの友人のように会話を楽しんでいました。GRAPHISOFT主催のKCC(Key Client Conference)が再び開催されたのです。リーマン・ショック後、しばらく開催を見合わせていましたが、ようやくこのような盛大なパーティを開催できるようになりました。
屋根テラスから見えるArchiCAD12の建物
翌日のカンファレンスでは、GRAPHISOFT本社のCEO、ビクター・バルコニの基調講演から始まりました。今回のプレゼンでは普段とは違い、業績の発表より今後の展望にフォーカスを当て、業界におけるエコシステムをどのように構築していくかを発表しました。彼が強調していたのは、GRAPHISOFTは限定された数少ない企業に対してニッチな製品を提供するのではなく、設計者から施工者、最終的にはクライアントまで、建築/建設プロセスに関わる全ての関係者に対して、BIMのメリットを提供することを目指しているということでした。
カンファレンスの様子
次の講演者は、開発部門のトップであるラチ・ヴェルテシです。ラチは、彼特有の低めのトーンでプレゼンを始め、私たちが直面している様々な課題に対して話しました。BIMに対する恐怖、サスティナブルデザインの要件、多国籍企業におけるグローバルチームの要件、高まるBIMデータのクラウド利用のニーズ(設計者だけでなく、施工チーム、クライアント、役所の関係者がいつでもどこからでもBIMデータを利用できるようにすること)、そして最後に、増え続けるBIMデータの容量の問題について触れました。GRAPHISOFTは、これらの課題に対して、BIMモデル作成のさらなる簡易化、エネルギー評価機能の標準搭載、BIMサーバーのさらなる強化と改善、そしてOPEN BIMのBIMソフトウェア間のさらなる強化を図り、ソリューションを提供します。特に興味深かったのは、彼がArchiCADのパフォーマンスにおける優位性をどのように維持していくのかを説明したことでした。開発チームは、新しく開発された全てのコードに対し、常にパフォーマンスの変化をモニタリングしており、それらのコードが過去のものより高速であることを確認できるまで、開発を進めないとしています。彼のプレゼンは「サグラダ•ファミリア」のビデオで終えました。初めて公開されたものだったので、壮大な拍手で幕を閉じることとなりました。
パフォーマンス・メインテナンス・システムのスライド
そして、おそらく最も期待されていたのが、続く製品デモです。次のバージョンがどうなるかを説明するだけではなく、開発チームで何が行われているか、今後数年のプロジェクトについて全てを話しました。この部分は厳重に秘密保持契約の下にあり、詳細は明らかにすることはできませんが、プレゼンテーションの後には多くの笑顔が見られ、鳴りやまない拍手が送られました。
ランチブレイクで和やかに会話をするCEOのビクター・バルコニ 
ランチの後は、設計事務所のユーザーによるプレゼンテーションが始まりました。最初のプレゼンターは、オーストラリア最大級の建築設計事務所、Rice Dubneyのトップであるダレン・ティムズ氏です。ダレン氏は、同社におけるArchiCADとの15年以上にわたる歴史を説明されましたが、実際は2006年まで、BIMツールとして最大限に能力を発揮するようには使用していなかったということを説明しました。しかし、一度「BIMの旅」が始まったら、後戻りすることはなく、 「BIMの夜明け」の時代には、劇的に効率化した、と述べました。そして、オーストラリアで初めてBIMと資産管理ソフトウェアを使用して竣工/引き渡しされた高層ビル、シドニーの「ARKプロジェクト」について語りました。また、クイーンズランドに位置する、非常に素晴らしく調整された巨大な病院など、最新のプロジェクトを披露されました。
Rice Dubneyの「BIMの旅」 スライド
次のプレゼンターは、ArchiCAD 16に使用された美しい図書館の設計を行った設計事務所、Helen and Hardからダグ・ストラス氏です。ダグ氏のプレゼンテーションは、BIMに関してというよりは、デザインにフォーカスをしたものでしたが、素晴らしいノルウェーの風景に見事に調和した、美しい木造建築の数々を見せて頂きました。もちろん、「ArchiCAD 16の図書館」の様々な写真も見せて頂きました。
ノルウェーの森のロッジby Helen and Hard
続くプレゼンターは、アメリカ西海岸に位置する、Quattrocchi Kwok Architects (QKA)からアーロン・ジョブソン氏です。QKAは中規模の設計事務所(約50名の設計者)であり、ほぼ完全に、高校や大規模な大学キャンパスなどの教育施設に特化しています。BIMソフトウェアとしてArchiCADを選び(完全にMacを使用している会社であるため、必然的ですが)、使用しています。2005年より、企画から施工の調整まで、全ての設計をBIMで実施しています。実際、彼らのプロジェクトの範囲は非常に拡大しており、インドに業務の一部を外注するようになっています。また、大変興味深かったのは、レンダリングはQKAのBIMデータを使用して、品質の高いプレゼンテーションを短期間で仕上げることのできる外注先に任せることにしているため、設計者は完全にデザインに集中できるということです。そして、それが彼らにとってはBIMデータを作成することとイコールであるということです。QKAはまた、サスティナブルデザインにも重点を置いており、アーロン氏は、これはBIMでなければ不可能だろうと述べていました。
ドナウ川が見える穏やかなテラスでコーヒーブレイク
最後のプレゼンターは日建設計の山梨氏です。皆さんの多くは、すでに彼のプレゼンテーションをご覧頂いたことがあるかと思います。BIMの利用におけるメッセージは力強く、参加者は、「ソニーシティ大崎」の環境に配慮されたファサードデザインなど、日建設計のクリエイティブで新しいBIMの使い方に大変感銘を受けていました。
パネル・ディスカッション
その後、発表者によるパネルディスカッションが行われました。「BIMの役割」に論点が置かれ、BIMとはツールであるか、設計を変えるものなのか、等議論が行われました。この議論の結論は、セッションの最後に山梨氏がまとめました。「BIM is not just a tool, but a new way of thinking about architecture(BIMとはただのツールではなく、建築における新しい考え方である)」この言葉には、多くの参加者が感銘を受け、1日目のカンファレンスの素晴らしい締めくくりとなりました。そして、この時間にはホテルからドナウ川の美しい日没を見ることができました... 次回は、このイベントの2日目を書きたいと思います。
ドナウ川のマジカル・サンセット

2012年9月18日火曜日

どこまでモデリングしたらいいですか?

間違いなくこの質問は、私たちがユーザーの方から最も頻繁に尋ねられる質問であり、また、非常に難しい問題でもあります。難しいというのは、場合によって異なるため正しい答えは数多く存在します。しかし、最適なモデリングの量はどのように導き出せばよいのでしょう?全てを一つずつ試す暇はないでしょう。

先月末に開催されたArchiCAD 16新製品発表会にて、ポルトガルのゼネコンであるMota-Engil社*のBIMディレクター、アントニオ・メイレイレス氏をゲストに迎えました。同社は2010年にBIMを始めたばかりですが、著しい発展を遂げています。非常に印象的だったのは同社のBIMモデリングが組織的で精密に計画されたアプローチで実施されており、結果的に失敗の可能性を限りなくゼロに近づけている、ということでした。まず目標を作成すること、つまり、BIMモデルを何に使いたいのかを明確にしなければならないということがBIMのビッグ・クエスチョンの一つの答えとして、Mota-Engil社のアプローチが示しています。




同社は3つの目標に分類しています。
1. マーケティング(プレゼンテーション/合意形成): デザインについてクライアントを説得する
2. 数量計算 : BIMモデルから正確な数量を抽出して積算をする
3. ドキュメンテーション : BIMモデルから施工図を切り出す
当然ながら非常に詳細なモデリングを必要とし、1,2を含みます。 それぞれのカテゴリにおいて対応するモデリングのレベルは、社内のBIM標準で設定されます。

続いて、全ての情報はマトリックスに整然と並べられます。この時点で私の同僚は恐らく「またベンツェさんのマトリックスが出た!」とあきれ半分になるでしょう。確かに私は必要以上にマトリックスを好む傾向にありますが、Mota-Engilの実施については、上記の目標を構造のタイプや場合によって細かく対応できるという点で、正しい答えを導き出しているのではないかと思います。これを「BIMモデルマトリックス」と呼ぶことにしました。

縦軸は施工プロセスの様々な段階です。基礎工事、1階躯体工事、内装工事等です。横軸は施工の様々なタイプが並びます。一つ目は内壁LGS、プラスターボード、仕上げ、建具等の意匠要素です。2つ目は柱、梁、スラブ等の構造要素です。そして3つ目は空調、冷暖房、配管、電気等のMEP要素です。フレームワークが完了すると、上記で挙げた3つのゴールを割り当てます(モデリングが必要ない場合、空欄のままにします)。アントニオ氏の部下がマトリックスを仕上げると、彼はマトリックスを確認し、管理します。例えば、1階部分の建築はレベル1になっているのに、3階部分の電気配線はレベル3になっている等、矛盾している箇所がないかを確認します。また、効率的でない箇所も探します。例えば、ある部分をレベル2でモデリングしても、数日後にレベル3で提出予定になっていれば、最初からレベル3でモデリングした方がシンプルで安価です。。このような問題全てを同僚やサブコンと十分話し合い、確認します。その後、モデリングの担当者は割り当てられたタスクに集中し、モデリングし過ぎず、しなさすぎず、必要十分な量を実施するよう作業を開始します。
もう一つ、シンプルですが、Mota-Engil社が採用している賢いアイデアがタイムログという考え方です。BIMのモデリング担当者は割り当てられた「BIMモデルマトリックス」のどのセルに何時間作業を費やしたかという記録を入力することを求められます。これにより、会社がBIMモデルのコストを正確に把握することができ、さらに、モデリングのそれぞれの段階やレベルにおいて平均でどのくらいのコスト/時間を要するか(例えば、オフィススペースの2階部分のモデリングには1平方メートルあたり平均○○円等)、貴重なデータを集めることができます。このデータはデータベースに保存され、新しいプロジェクトの見積もりを出す際、「BIMモデルマトリックス」と共に使用します。これにより、アントニオ氏は予算とタスクによって、BIMモデリングの精密な計画と最適化されたモデリングのレベルを算出することができます。結果として必要とされるBIMデータが作成されるかを確認し、また、複雑すぎるモデルを作成してしまうことによる過分な作業を避けることができます。

そして、これがタイトルの質問の答えです。詳細に設定されたゴールに対して必要十分な量をモデリングするということです。慎重な検討をせずに建物を建てることがないように、何を達成するかを検討せずにBIMでモデリングを始めるべきではありません。Mota-Engil社の方法はあらゆる規模の企業が簡単に採用できる方法だと思います。特別なツール等を必要とせず、必要なのはExcelと論理的な思考のみです。お試ししてはいかがでしょうか?

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*Mota-Engil社は大手ゼネコンであり、主にヨーロッパ、アフリカ、ラテンアメリカ等の地域で活動をしています。2011年の年間売上高は約1,700億円となっています。詳細はMota-Engil社のHPへ(英語)
**この方法が非常に有効であると考えており、より詳細な情報を収集し、日本にどのように取り入れることができるかというアドバイスを含め、提供したいと考えております(ブログ上ではなく、グラフィソフトジャパンのWebサイトでホワイトペーパーの形で提供することを考えております)。

2012年9月10日月曜日

Keep Calm and Carry On

「BIMで一番難しいことは何だと思いますか?」あるお客様が説明してくださいました。「何も図面を見せることができない状態で、問題なく全てが順調に進んでいるということを上司に納得してもらうことです。従来、図面は一枚ずつ徐々に完成するものであり、それに慣れていると、最後に図面が出来あがるというBIMプロセスが恐怖に思えるのです」

確かにその点において(他の多くの側面も同様)、BIMは2D CADと大きく異なります。2Dのプロセスは「直線的」、または「連続的」とも言えるでしょう。まず平面図から始め、断面図、立面図、その後、様々な一覧表や詳細へと進みます。結果として、作業を行ったものは目に見えるものとして、印刷可能なものであり、明らかな進捗状況として上司、同僚、最終的に自分自身で認識することができます。図面の半分が完成しているということは、作業の半分が完了しているという意味をそのまま表します。この点においてはBIMに対して、2Dプロセスの優位点であると言えるかもしれません(その他に多くあるわけではありません)。BIMの場合には、モデルや図面上で作業したものは、ある意味、裏で不思議と生成されているのです。モデルが完成すれば、図面も完成します。しかし、一枚ずつではなく、一度にまるで奇跡のように(少し単純すぎますが、大まかな考え方としてです)完成します。BIMにおけるポイントは、ここではなく、結果の「品質」が従来のプロセスに比べはるかに優れていることです。


この問題を改善するための一つの方法は、図面化に必要な情報を出来る限りフロントロードすることです。予め断面図や立面図の位置を決め(何も表示されない状態でも)、モデルから抽出する全てのドキュメントのレイアウトを作成し、出来る限り注釈を入れる、など。これにより、図面は進捗に応じて即座に表示されるようになり、適切な設定(図面枠、図面のタイトルや注釈)で自動的に線が生成され、早い段階からある程度正しい図面のように見えます。これはそれほど多大な作業ではなく、これを行うことにより、上司へ図面の「イメージ」を作ることもできます。

しかし、もっと重要なのは、単にこれに慣れなければならないということです。「Keep Calm and Carry On (落ち着いて平静を保つ)」とかつてイギリス人は言いました。これはBIMモデルを作成することは、実際のプロセスに非常に近いことを意味し、2Dプロセスはある意味で変わった抽象的な方法です。 現実では、マンションの建設現場に予算の50%が費やされれば、半分の住民が住むことができるわけではありません。 上司や同僚が進捗が見られないことに対し不平を言う場合、これは「まだわかっていない」というサインです。BIMのコンセプトのさらに十分な理解が必要です。これに対しては忍耐強くしなくてはなりません。BIMは一度理解すれば非常にシンプルでわかりやすいコンセプトです。2Dのパラダイムをもとに教育を受け、仕事をしてきた人たちにとっては簡単に受け入れられないかもしれません。BIMコンセプトの普及の一環と捉えて取り組んで頂ければ幸いです。

2012年8月28日火曜日

過去最高のArchiCAD

毎年この時期、ArchiCADの新バージョンがリリースされます。毎年これが最高のアップグレードである理由を皆様にご説明するのが、私たちの仕事です。 しかし今回、ArchiCAD 16について強く感じているのは、チームワーク2.0が導入されたArchiCAD 13のときに匹敵する、非常に重要なステップとなるということです。

ArchiCADは、設計の中間地点である基本設計と実施設計において最も多く使用されています。コンセプトデザイン用にArchiCADを使用することも可能ではありますが、SketchUp®*のような3Dモデラーを使用し、シンプルなマスモデルを組み立て、別々に2Dモデルを作成するというケースが多く見られます。実際、SketchUpは非常に使いやすく、手ごろな価格(基本バージョンは無料)ですが、この場合、図面は2Dで作成しなくてはならず、結局のところ、2Dベースの設計時に起こりうる、いつもの問題がついてまわります。各種図面の不整合があり、3Dモデルは別々にアップデートしなくてはなりません。そして、初歩的なマスモデルでは、初期段階で非常に限られた解析しか行うことができません。しかし、さらに大きな問題は、コンセプト段階で3Dモデルを作りすぎる傾向にあり、それによって、手放すことができず、BIMで再構築できなくなるということです。結果的に設計者は「3Dモデルをここまで作ったのだから、あとは2Dで図面を完成してはどうか?」となり、また古いやり方にはまってしまうのです...

このような問題がありつつも、また、ArchiCADを使い込んで頂いているお客様でさえ、コンセプト段階において前述の方法を適用されていることが頻繁にあります。なぜでしょうか?理由はシンプルです。誰もスラブを使ってマスモデルを作成したくないのです。ArchiCAD、特にシェルツールが導入されたバージョン15からは、柱、梁、壁、スラブを使ったBIMモデリングをスムーズに行うことができました。しかし、認めざるを得ないのは、これまでのArchiCADでシンプルなマスモデル(過去のポストで「クレイモデル」と呼んでいました)を作成するのに最適なツールはありませんでした。ただし、それは過去の話となり、これからは違います。ArchiCAD 16では新しいモルフツールの導入により、私が今まで思い描いていた「簡単で楽しいモデリング」が実現できるでしょう(当時、内部の情報を持っていたことも認めます)。このモルフツールは生活産業研究所様から新しくリリースされるマスプランを利用すると、さらに便利になります。このアドオンを使うことにより、モルフ要素をゾーンに変換し、詳細な面積計算を作成することができます。そして、最終的にモデルを壁やスラブのような、他のインテリジェントなBIM要素に変換することができます。これを利用すれば、企画段階からBIMを使うことに障害はなくなるでしょう。


二つ目に、私が個人的にArchiCADの競合から欠けている部分について聞かれれば、「オブジェクトの作成」だと言っていました。もちろん、GDLがあります。ハイエンドでパラメトリックなオブジェクトを作る最高の方法です。しかし、誰もがスクリプトを書けるわけではありません。控えめに言っても、95%のユーザーはスクリプトを避けるでしょう。そしてこのことは、カスタムオブジェクトを簡単に作成する方法と言い難いものでした。ここでもモルフツールはソリューションをもたらします。 実質的にゼロからモデルを作成できるだけではなく、既存のオブジェクトをモルフ化し、編集することができるのです。ArchiCADの数多くのGDLオブジェクトから、例えば窓をモルフ化し、窓枠を編集/調整することができるということです。さらにDXFや3DSなど、他のフォーマットでも自由に配布されているオブジェクトをダウンロードし、編集することが可能になります。さらに、私たちはBIMcomponents.comと呼ばれる新しいコミュニティWebサイトを立ち上げます。何千ものパラメトリックなGDLオブジェクトを自由に利用することが可能となり、また、登録したユーザーは自分のオブジェクトをアップロードし、コレクションをWeb2.0の形で発展していくことが可能です。ArchiCADのユーザーは、ArchiCAD上でこのサイトからオブジェクトを検索し、見つかったBIMデータを直接ドラッグ&ドロップすることができます。GRAPHISOFTが一旦何かに取り組むと、それを適切に実行することについて、しばしば賞賛されてきました。私はこのBIMオブジェクトを取り巻く新しいインフラは、この精神における良い例だと思います。

そしてさらに、ArchiCAD 16は環境分析ツールを内蔵した初のBIMシステムになります。確かに、優れたエネルギー解析プログラムは数多く存在しますが、基本的に全てIFCや他のフォーマットを使用してデータ交換を行う必要があります。これは難しいことではありませんが、実際、最も簡単なデータ交換とは、すべてを保存していない状態で、ArchiCAD内で解析アプリケーションが実行されることです。いつでも必要性を感じた時、ボタン一つであなたのデザインの環境性能を分かりやすくレビューできます。

これが革命的なリリースでなければ、何だと言うのでしょうか?

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PS: 来年のArchiCAD 17の時に何を言えば良いかだけが心配です。また、来年考えます。。。 

*SketchUp®はTrimble®社の商標登録です。

2012年8月20日月曜日

利益には痛みを伴う

今年の夏はとても忙しいです。弊社では、毎年9月がアップデートサイクルのクライマックスであり、新バージョンのリリースや新製品発表会などのイベントなどの準備が重なり、7,8月から非常に忙しい時期が続きます。しかし、今年はそれに加え、大幅に人手が取られる大きなプロジェクトが動いています。このプロジェクトを「ERPの導入」と呼んでいます。
ご存知ない方の為に:ERPは、 "エンタープライズ・リソース・プランニング"の略で、受発注、出荷、財務管理などの全ての基本的なビジネスプロセスを一つのシステムに統合します。新しいシステムを使用することにより、一回の簡単な操作で本社からソフトウェアの発注が可能になり、発注書や請求書の作成、売り上げ報告、ユーザーDBのアップデートなど、データが常に最新の状態となります。

聞き覚えがないでしょうか?私たちにはあります。複数の関連するデータベースを古い方法で、相互に連結されていない数十ものExcelファイルなどで管理するということです。頻繁に、同じデータを2回以上入力する必要があり、別々の計算から数字を持ってこなくてはならなかったり、変更があるとプロセス全体をやり直さなくてはなりませんでした。ここで、業務処理データを建築/建設データに、Excelシートを2D図面に置き換えてみると、驚くほど共通点があります。設計者は面倒な入力処理があり、結果の不整合や変更に柔軟に対応していかなくてはなりません。これに対し、ERPシステムは、「業務管理のBIM」のようなものです。一元化されたデータベースがあり、全ての入力は一度だけで、接続されている全てのデータが自動的に更新します。まさにBIMの原則と同じです。

シンプルでロジカルに思えますが、そう簡単ではありません。まずはシステムを購入する必要があり、これは当然安くはありません。実際に、BIMシステムよりも高価です。しかし、ソフトウェアのコストはトータルコストのほんの一部であり、セットアップとトレーニングを提供するシステムインテグレータ会社に多くのコストを支払わなくてはなりません。もちろん、これは本社のGRAPHISOFT(実際には:Nemetschek社グループ全体)が関わっており、要件の調整や、データ交換のテスト、使用する上でのアドバイスなど、私たちへのサポートにかなりの時間を費やしています。しかし、社内で発生する最大のコストは、今後のシステムを使う人が新しいプロセスを習得するために費やす時間です。Excelは誰でも使えますが、新しいシステムの場合、当然ゼロから学習する必要があります。それだけではありません。現状のあらゆるプロセスを見直し、新しいERPシステムに適用させるかどうか一つずつ検証しなければなりません。以前と同じようなプロセスで行うことができるものもありますが、多くの場合、プロセスを大幅に変更する必要があり、場合によっては制限が厳しくなり、柔軟性が低くなることもあります。

このような背景がありつつも、「開始日」は迫っており(10月1日に予定)、この時点で全てが以前より良くなるわけではありません。新しいシステムは柔軟性が低くなり、以前のように臨機応変に発注を行うことはできなくなります。私はこの発注プロセスが以前より大幅に速くなるとも思えません。新製品や販売方法は、さらにお金のかかるカスタマイズのプロセスを必要とし、トレーニングは一時的なものではありません。新しい社員はトレーニングが必要となり、システムが更新されたら既存のユーザーもそれに合わせてトレーニングが必要になるかもしれません。

では、なぜこれを行う必要があるのでしょうか?このような様々な側面があるにも関わらず、多額のコストを支払い、 現在のシステムを新しいシステムに変える必要があるのでしょうか?それは、これらのマイナス面を考慮しても、ERPシステムの利点が非常に大きいということです。

最もわかりやすい利点はデータの整合性と数字の一貫性が確保されるという点です。まさにBIMと同じように、一般的なデータベースを使うだけでは別々のレポートに異なるデータを持つことは不可能です。これだけでも、作業量を大幅に減らすことが可能になり、導入コストの高さを正当化することができます。しかし、さらに重要なのは、いつでもあらゆるデータにアクセスすることが可能になり、実質的に会社のあらゆる側面においてレポートを即座に作成することができる、ということです。これにより経営陣は、古い「2D」システムの時より賢く、恐らくより良い意思決定を行うことができるでしょう。ビジネスプロセスをERPへ移行するための時間そのものも、全て無駄というわけではありません。以前のプロセスを見直すことで、多くの矛盾や無駄を発見することができました。全体的に、新しいソフトウェアが完全に使用されることになれば、この努力は確実に戻ってくると確信しています。そのためには、まず真剣に取り組まなくてはならず、これは痛みを伴います。社員がこのプロジェクトに多大な労力が必要であるということを実感した際、とても嬉しそうには見えませんでした。私が信じて話したことは、私たちがお客様に弊社のBIMソリューションの導入を提案するのであれば、せめて、それと似た社内プロセスを変える方法を導入し、「業務管理のBIM」を実感しなければなりません。お客様にとって必要となる労力に似たものを体験することは、私たちにとって貴重な経験です。

恐らく、私の言いたいことがおわかりでしょう。これらの労力はArchiCAD(または他のBIMシステム)を導入するときに必要になるものと、さほど変わりません。必ずしも苦痛となるわけではありません。(実際、BIMはすべてのプロセスに同時に適用する必要はありません)しかし、本質的には同じです。現状のプロセスを見直し、新しいシステムを学ぶ一方、ある程度の柔軟性を諦めることとなります。これは多大な労力を必要とし、それによって効率が初日から良くなるということはありません。実際、一般的にBIMを導入後、それ以前の効率性のレベルに戻るためには2~4ヶ月必要だと言われています。しかし、痛みと引き換えに多くの利益も得ることができます。ミスを排除し、アイデアをコミュニケーションする方法は大きく改善され、より素晴らしいデザインのコントロールが実現できます。より良いデザインはすぐにも実現できます。痛みを伴う価値があると思いませんか?

2012年8月7日火曜日

弘法にも筆の誤り

BIMの利用が拡大している今、BIMモデルの品質が非常に重要になってきています。モデルの品質保証は不可欠であり、些細な矛盾が後に深刻な問題につながる可能性があります。非常に慎重なプロセスであってもミス、問題、不整合は自然と発生します。重要なことは、後に深刻な問題になる前に早期に発見し、修正することです。

たとえば、柱をコピーして、間違って2回貼りつけてしまったとします。画面上では気づきませんが、コンクリートの量は当然二倍になります。同様のことが同時に複数の要素で発生した場合、深刻な不整合が発生する可能性があります。このような単純ミスに加え、設計ミスも多く存在し得ます。複雑な病院の設計で車椅子などのクリアランスを十分確保できているでしょうか。避難経路や防火壁が必要十分に含まれているように設計できたでしょうか。後に発覚し、コスト高な再発注をせざるを得なくなることや、最悪の場合、現場調整もあり得ます。 全体像で見れば、BIMを導入する主な目的の一つは、意匠、構造、設備との調整であるということもあります。これらの要素は異なるチームによって、また、異なるツールを用いて入力されており、第一段階で不整合や、干渉が発生するのは極めて自然なことです。これらを解決するために、設計者は統合されたBIMモデルを作成し、干渉を検出し、一つずつ解決しなくてはなりません。場合によっては、これを設計プロセスで複数回行わなくてはなりません。

2D図面の品質確認については、目視により確認する、ということが比較的容易に行われてきましたが、BIMモデルにおいて行うことははるかに困難な作業です。検索機能を使用することによって、このようなマニュアルの品質保証の有効性を改善することはできますが、これだけではまだ非効率的であり、ミスも発生しかねません。さらに、大規模な建物の場合、膨大な量の検証を、少なくとも部分的に自動化しなければ、ワークフローの重大なボトルネックを引き起こす可能性があります。欧米でBIMの干渉チェック、レポートツールの需要が高まっているのも不思議ではありません。最も広く使用されているツールはSolibri Model Checker™です。フィンランドのSolibri社による素晴らしい製品で、主要なBIMアプリケーションのIFCを読み込み、表示し、干渉チェック、整合性のチェック、空間分析、アクセシビリティ分析などを実行し、分かりやすいレポートを作成し、品質保証を可能にするツールです。特に興味深い機能は、これらのチェックをカスタマイズすることが可能であるため、社内標準に従ってモデルが作成されているかをチェックすることができます。


また、SolibriはIFCを使わず、ArchiCADのファイルを直接読み込むことができるということも、ArchiCADユーザーの間でSolibriが広く利用されている理由の一つです。 実際、海外の多くのパワーユーザー(AIDEA社やMota-Engil社等)がSolibriを社内プロセスに採用しています。現在までのところ、日本のお客様にとっては、日本語バージョンが存在しなかったことや、英語バージョンにおいても日本の代理店が存在しなかったことにより、現実的な選択肢ではありませんでした。しかし今回、Solibri社は日本語バージョンを作成します。さらに、先週私はSolibri社のCEOであるHeikki Kulusjarvi氏と販売契約を締結して参りました。これにより、グラフィソフトジャパンはSolibri Model Checker™を販売およびサポート致します。ArchiCADと同様に、真摯に情熱を持って、これを実施して参ります。さらに、ArchiCADユーザーに限らず、弊社が提唱しているOPEN BIMのコンセプトと同様に日本の建設業界の皆さんにSolibri Model Checker™を利用して頂きたい思います。

 8月28日東京、31日大阪で開催されるArchiCAD 16新製品発表会でSolibriをお披露目致します。

2012年7月27日金曜日

目が赤くなる週

来週からは恐らく、目を赤くした社員が出始め、コーヒーの消費量が一気が上がり、それでも我慢しきれずに会議であくびをする、という光景を目にするでしょう。このおかしな現象は、2年前のサッカーワールドカップ期間中にも起こりました。その時は男性社員だけでしたが、今回はさらに広まるかもしれません...

そうです、オリンピックです!私はよく、どこの国のチームや選手を応援するのかと、聞かれることがあります。「もちろん日本です!」と答えるとびっくりする方もいらっしゃいます。私にとっては不思議なことではありません。現在までで合計14年間日本に住んでおり、ハンガリーを除いて最も長い期間、ここ日本で暮らしています。もちろん、日本を応援します!他にはないでしょう?私にとってはここが第二の故郷です。

難しいのは、もちろん日本のチームや選手がハンガリー人と対戦することになるときです。幸い、このケースはそれほど頻繁に起こりません。お互いに強い競技はかなり違います。例えば、最近ではハンガリーはカヤック・カヌー、フェンシング、水球、ハンドボールなどが強く、一方で日本は柔道、レスリング、女子サッカー、体操などが強いと思います。これらの競技では、戦っても勝負にならないということになります。しかし、接戦となるポイントもあります。最も興味深いのは水泳平泳ぎの北島選手とダニエル・ギュルタ選手の壮絶な戦いです。

私は北島選手の3度目の五輪への意志の強さと体力を称賛します。私の年のせいかもしれませんが、普段は若い新人より、「年をとった」アスリートが王座を死守したり、カムバックを遂げる(数週間前のフェデラーのように)のが好きです。しかし、この場合だけは...許してください、若いギュルタを応援します。しかし、最も重要なこと(これは皆さん同意してもらえると思いますが)は、「第三の男」が金メダルをとって笑うことがあってはならないということです。

それではゲームを始めましょう!

2012年7月2日月曜日

アジアに対する取り組み

先日、上海で開催されたGRAPHISOFTアジアパートナーカンファレンスに参加してきました。これは毎年行われているアジアの販売店向けのイベントであり、日本からは3人のスタッフを連れて行きました。少し多すぎると思われるかもしれません。参加の目的は、支社の同僚やアジアのパートナーにコンタクトし、お互いの経験を共有し合うことでした。日本からはどのようなことに苦戦し、成功してきたかという経験を共有し、また、先日リリースされたArchiCAD BIMガイドラインや、日本用に開発されたアドオンツール(かなり興味を持たれました)についてのプレゼンテーションをしてきました。しかし、今回の一番重要なポイントは、日本企業が盛んに海外進出しており、ビジネスチャンスが生みだされているということをアジアのパートナーに伝えることでした。私たちのポイントをより明確に伝えるために、日本のゼネコンからゲストスピーカーをお招きし、アジア諸国での取り組みと要件について講演して頂きました。

グラフィソフトのアジアチーム
アジアの新興については今さら言うまでもないでしょう。世界経済におけるアジア諸国の役割は急速に成長しており、何世紀にもわたる経済的、政治的な弱さを経て、正式にその役割を担うこととなっています。これは中国とインドだけの話ではなく、実質的に巨大なアジア大陸の全ての国が含まれます。この発展は欧州、米国、日本のような先進国の援助によって起きているのではなく、正真正銘の「アジアの台頭」であり、世界中のあらゆる地域に利益をもたらしています。したがって、近年の日本の建設会社における、東南アジアの活発な活動についても不思議ではありません。建設業界では国内での成長の機会は限られており、アジアにおけるビジネスはますます重要になっています。最近ではゼネコンだけではなく、設計事務所からも中国や東南アジアへの注目が高まっています。日本の建築デザインは高い評判を得ており、引っ張りだこになっています。多くの企業が現地の支社を設立、または拡大しており、当然ながら、こういったオフィスではBIMを含む最新の技術を整備したいと考えています。

最も簡単で合理的な選択肢は、国内で使用しているのと同じBIMシステムを海外でも運用することでしょう。しかし、弊社の日本での製品サポートと同じレベルを提供できなければ、海外での運用は難しいと通告されました。これをパートナーだけで行うのは非常に難しく、香港やシンガポールなどの重要なビジネスのハブとなる地域での強い存在感なしには実現し得ないと認識しています。幸いなことに、既に昨年からGRAPHISOFTは、アジアへの多大な投資を開始しています。至るところに支社を設立しています。香港と北京オフィスは既に設立され、現在、シンガポールオフィスが設立中であり、また、近い将来上海、重慶、インドのオフィスも設立する予定です。当然のことながら、私たちも自分自身のためにアジアに向かっています。アジアはGRAPHISOFTにとって大きなチャンスですが、この動きによって日本のBIMも前進することを願っています。この見方で言えば、今年のカンファレンスで私たちグラフィソフトジャパンが強い存在を示したのはより分かりやすいのではないでしょうか。グローバル化したお客様と仕事をするには、中国やアジアの現地のスタッフの採用、そして支社とより一層協力を深める必要があるでしょう。私はグラフィソフトジャパンの代表として、また、グローバルなGRAPHISOFTの経営陣のメンバーとして、この実現に力を尽くすことをお約束します。

2012年5月16日水曜日

激動の日々

もし、今日弊社のオフィスにお越しになられたら、ひどい散らかり様を目にするでしょう。本当にひどいです。過去の書籍や販促物が山積みにされ、PCの部品とたくさんの箱が散らばっています。一般的に言えば、とても自慢げに話せる内容ではありませんが、私はこれを誇りに思っています。なぜなら、ついに今週末、新しいオフィスへ移転するからです。引っ越しは大変です。しかし同時に、広くてより良い環境になることは嬉しいイベントです。

新しいオフィスは現在のオフィスから徒歩10分くらい(女性には15分程度かかるかもしれません...)の場所ですが、赤坂見附駅から徒歩2分のビルで交通の便が非常に良くなります。そして一番重要なのは、広さです。現在のオフィスの約2倍の広さになります。より広いスペースがあるということは、よりたくさんの機会があるということです。より多くの社員を雇うことも、より多くの人にトレーニングを提供することも、より多くの会議を同時に行うことも可能です。


また、見た目もカッコいいです。個人的に建物がバウハウス的なシームレスでエレガントなデザインで気に入っていますが、それだけではなく、私たちは建築家にツールを提供している会社として、良い建築へ感謝の気持ちを持つべきだと考えています。これはGRAPHISOFTの伝統でもあります。ブダペストの本社もまた、いくつか建築の賞を受賞した素晴らしい建築の建物です。

インテリアに関しては、それ程高くないパーティションで、できるだけオープンな空間となるようにしました。オープンな空間により、意思の疎通が円滑になり、コミュニケーションやチームワークが促進されると思います。皆さんご存じの通り、「Teamwork™」はGRAPHISOFTにとって重要なものです。そして、ついに私の古いMacintosh SE30がエントランスに展示されることになり、大変嬉しく思っています。ここから日本のGRAPHISOFTの歴史が始まったのです…ただし、一つ問題もあります。大阪営業所のメンバーの顔を見ると、大阪のオフィスについてもどうにかしなくては、と思ってしまいます。しかし、それについては来年以降となるでしょう。
そしてもちろん、この拡大はお客様の皆様からの長年に及ぶ継続的な信頼とサポートなしには実現することはできませんでした。新しいオフィスで多くの方々とお会いできればと思います。

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弊社の新しい住所は以下の通りです。
〒107-0052 東京都港区赤坂3-2-12 赤坂ノアビル4階

2012年5月1日火曜日

ボトムアップ、トップダウン

ArchiCAD BIMガイドラインの第二部がスタートします。基本設計をターゲットとした第一部を先月にリリースし、今回は実施設計編を作成しました。これまでにユーザーの皆様から受け取ったフィードバックは非常に肯定的であり、改めてBIMのノウハウをまとめ、広げるというプロジェクトを継続していくことを決意しました。

しかし、BIMガイドラインについて多くの方々から同じ質問を頂きました。それは、「なぜドア、窓、カーテンウォール等のBIMオブジェクトがテンプレートに入っていないのか」ということでした。1つの回答は非常に単純なものです。ArchiCADは1,300以上のパラメトリックオブジェクトがデフォルトで用意されており、また、VIPservice会員用には、ダウンロードが可能な多くのオブジェクトを提供しております。しかし、もっと根本的な、いくつかあるBIMソフトとの成り立ちの違いを説明する必要があります。それは、いくつかのBIMソフトは元々機械製品の設計向けに開発されたものであり、ArchiCADは建築設計用にゼロから開発されたものだからです。この重要性を理解し、機械と建築この2つの異なる設計プロセスを考える必要があります。

機械設計の大半は大量生産のためのものであり、ほとんどのコンポーネントが標準化されている場合にのみ有効です。エンジニアは、まずコンポーネントを集める(または必要に応じて設計する)ことから始めなくてはなりません。そのプロセスを踏まなければ大きいユニットを組み立てることはできません。CADに関して言えば、最初に「マスタデータ」を作成しなければ設計を開始できない、ということを意味します。これは「ボトムアップ」プロセスと呼ばれるものです。このコンポーネント、オブジェクトを設定するのは面倒な作業ですが、機械工学の元々の流れに反しているわけではなく、さほど大きな問題ではありません。

建築も大量生産に向かう兆しはありますが、間違いなく、車や船などのレベルに達することはありません。クライアントの広く異なる要件や、様々な現場はそれぞれの特異性を有するため、設計者は固有の製品を作らなくてはなりません。メーカーによるコンポーネントの利用は広がる一方、建物の最も重要な部分、壁、屋根、構造などの骨組は依然としてカスタム設計されることとなります。そして、この骨組みが他の要素を決定するため、設計は当然ここから開始する必要があります。これは、まず意思決定のスタートが「建物の全体的なデザイン」からなされる明らかな「トップダウン」プロセスであり、その後、少しずつ詳細に落とし込まれていきます。その結果、プロセスが使用可能なコンポーネントによる制約を回避し、設計者はより自由を担うことができます。

BIMソフトが機械設計に起因している場合、「ボトムアップ」プロセスを促進する傾向があることは当然だと思います。この場合、設計作業を開始するときは事前に部品が整理され、並べられているということが必須となります。ただし、問題は、この時点で設計者はどの部品を使うべきなのか、確定していないことです。もし、設計者がBIMソフトを直接使わず、オペレーターに指示する立場であれば、問題は比較的小さいかもしれません。しかし、そもそもBIMはオペレーターにではなく、設計者に使われるべきであり、これは設計者だけがコントロールできるものだと思います。

ユーザーの皆様からはよく、ArchiCADは競合するBIMソフトより簡単に使える、と仰って頂けます。(私自身、これを誇りに思っています) その理由は、作業に取り掛かる前に面倒な部品作製などのセットアップ・プロセスを強いられることなく、直接デザインの作業を楽しむことができるからであると思います。ArchiCADは、最初から建築設計プロセスが「トップダウン」であるという事実を踏まえて開発されたうえ、これが、設計者の望むものをコントロールする唯一の方法なのです。その結果、ArchiCADでは最初からテンプレートの一部として多数のBIMコンポーネントライブラリを持つ必要はなく、後から必要に応じて、自由にGDLライブラリの変更や追加、ツールでカスタムオブジェクトを作成することができます。また、レーヤー設定など、さまざまな環境設定や属性についても同様です。

ArchiCADは「建築家のために建築家によってデザインされた」製品です(以前の製品スローガンとして使われた言葉のひとつ"Designed by Architects for Architects")。 これで少し理由をおわかり頂けるとよいのですが...

2012年1月30日月曜日

BIMの3本柱

時々BIMについて、特にBIMのメリットについて1分以内で簡単に話さなければならないという機会があります。この長さはアメリカのビジネスシーンで「エレベーターピッチ」と表現されます。エレベーターに乗るだけの時間枠で何か話をするということです。 

私の「エレベーターピッチ」では、短いケースでも必ずBIMモデルについて3つのメリットを話します。それはビジュアルコミュニケーション、ドキュメント調整、そして積算です。これを「BIMの三本柱」と呼ぶことにしています。もちろんBIMにはその他にも様々な重要な側面がありますので、不公平であることを認めざるを得ませんが、エレベーターに乗っている時間は非常に限られています。

ビジュアルコミュニケーションは「プレゼンテーション」とされることが多いのですが、これはそれ以上のものです。設計の合意形成を加速させ、設計プロセス、さらには施行段階に起こりうる様々な行き違いを未然に防ぐことが可能になります。ドキュメントの調整は設計変更や現場での調整にかかる多大なコストの削減が可能になります。正確な積算およびプロジェクトのコストコントロールは発注者が夢に見てきたものです。

私たちグラフィソフトおよび他のBIMベンダーも同様に、1番目のビジュアルコミュニケーションについては非常に長けています。2番目のドキュメント調整は徐々に改善されています。しかし、3つ目の積算についてはまだまだ弱い分野だと思います。一番難しい課題でもあります。積算をするためには非常に正確なBIMモデルを作成する必要があり、これには大変な労力を要します。さらには、国ごとにルールが大きく異なるため、世界中で展開しているBIMシステムに組み込むことは難しいのです。この解決策として、OPEN BIMのコンセプトが存在します。グローバルに展開しているBIMアプリケーションと各国の積算ソフトが連携するということです。

こういった理由から、昨年秋に日積サーベイ様からヘリオスという積算ソフトとArchiCADのデータ連携ついて、多くのArchiCADユーザーの方々からの要望を受け、開発の話を聞いたときは非常に嬉しく思いました。同社は積算の分野において40年以上もの実績を持ち、この連携によって日本の標準に沿った積算が可能となり、また同時に積算ソフトでモデルを作成するという最も労力のかかるプロセスをArchiCADから提供することができます。さらに重要なポイントは、BIMのデータを使用した数量計算は設計変更が発生する度に積算情報も最新のものに更新されていくということです。これは、設計者および発注者が設計が確定するまで数量計算を待つ必要がないことを意味し、初期段階でも迅速なコストのフィードバックを得ることができます。そして、コスト分析が間違った方向に進んでいる場合に、その段階で設計を変更することが可能になります。



"3本あれば、対象物は安定する"と物理のクラスで学びました。先週の日積サーベイ様とのプレスリリースは、BIMデータを使用した本格的なコストコントロールの提供とBIMのさらなる成熟を表しました。

ArchiCAD - ヘリオスの連携およびグラフィソフトジャパンと日積サーベイのプレスリリースについての詳細はこちら

2012年1月20日金曜日

うさぎ、龍、そしてシャンパン

また新しい一年を迎えました。昨年2011年は日本にとって様々な意味で特別な年でした。やはり未曾有の困難をもたらした災害が思い浮かびますが、その一方で、困難に打ち勝つ為、国全体が協力し、素晴らしい力強さと思いやりを示しました。昨年の漢字として「絆」が選ばれたことには大変感動しました。素晴らしい選出だったと思います。 

年明けは穏やかな日が続き、私たちの将来について考える時間ができました。また、昨年一年間を包括し、方向性をより明確にしていきました。昨年の苦難や、ユーザーの方々も含め、被災された方々のことを考えると「素晴らしい年だった」と言うことは適切ではないかもしれませんが、グラフィソフトジャパンとしての昨年は非常に成功をした年でした。昨年初めのキックオフミーティングでは、社員に向けて「うさぎ年はジャンプする年です」と伝えました。結果、見事に実現することができました。目標を超え、グラフィソフトジャパンの過去最高の業績を達成する数字となりました。さらに、ArchiCADの売上げは2年連続50%増を超える結果となりました。この結果を持って、驚くことではありませんが、グラフィソフトジャパンは2年連続でGRAPHISOFTワールドワイドの支社およびパートナーの中で最高の成長率となりました。(もちろん他国も成長しております)この重要性は、社内で表彰されるということだけではなく、GRAPHISOFT全体においてグラフィソフトジャパンの売上のシェアを伸ばすことで開発チームからますます注目を得ています。この注目度の高さが、日本独自の機能要件を高い優先順位で考慮することにつながり、結果的にユーザーの皆様に利益をもたらすことができると確信しています。 
ArchiCADライセンス売り上げの成長
しかし、あくまで昨年は昨年です。新年の期待は高まる一方で、白紙のページから始めなくてはならないことがビジネスの難しさです。成長する機会は皆平等に持っていますが、そのためには改善が必要です。数字の成長と共に、昨年末にはプロダクトマーケティング部に新たなメンバーを2名採用しました。さらに今年も採用することを予定しています。会社の規模も徐々に大きくなり、オフィスを移動する必要性も出てきました。しかし、人数の増加は成功自体を保障するものではありません。より賢く働く必要があります。昨年書いた通り、重要なポイントはBIMのノウハウのプログラムを作成し、それが継続的に学習ができるようにすることです。これが達成できれば、中小企業でも簡単にBIMを導入することができます。また同時に、開発チームの継続的なイノベーションにももちろん期待しています。今年もお客様を喜ばせてくれると信じています。

 通常、社内のキックオフミーティングでは、4半期の"MVP"を発表しています。今回は出荷部門のマネージャーである靭さんが年末の受注フローを見事に遂行し、選出されました。また、今回は初めて"年間MVP"の選出も行われ、各マネージャーの推薦により、プロダクトスペシャリスト、上野幸恵さんを選びました。彼女の熱心かつきめ細やかなカスタマーサポートなしには昨年のような結果は決して達成する事ができませんでした。 

このような結果でしたので、上等なシャンパンで祝っても良いのではと思いました。Facebookでご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、これがキックオフミーティングの写真です。このシャンパンでキックオフミーティングを終了しました。その後、続いて新年会となりましたが、その写真は公開しないほうが良さそうです...

しかし、この新年会が行われたのは先週で、今週からは社内でも既にフルスピードでエンジンがかかっています。この投稿は少し遅れてしまったものです。時間が経つのはあっという間です。2012年の龍年もすぐに過去となってしまうでしょう。来年も今年のような楽しい新年会ができるよう願っています。