2011年11月22日火曜日

アルゴリズミックBIM


先日、イタリアの建築協会「CASARTARC」が主催するAAST インターナショナルワークショップの懇親会に参加させて頂く機会がありました。GRAPHISOFTとしてこのイベントに協賛しており、プレゼンをするよう依頼されていました。しかし、プレゼンをするのは懇親会の会場でしたので、どちらかと言えばお酒の席という雰囲気でした。こういったパーティでスピーチをするような状況で気をつけなければならないことは「簡潔に」ということでしょう。

ですので、もともと用意していたスピーチをやめ、短い挨拶と、弊社GRAPHISOFTの事業について少し述べるだけに留めました。しかし、折角用意したスピーチを無駄にしてしまうのも、もったいないので、ここに書くことにします。

以下、スピーチの内容です。

「建築家」は物事をコントロールすることが好きであるということは事実だと思います。私たちが想像することを形作ることだけではなく、それをクライアントのニーズや法令に基づき建築図書を作成します。このためには、材質や空間や形状をコントロールしなくてはなりません。従来、そのコントロールの方法は図面でした。それも膨大な図面でした。2D CADの導入はこういった意味では革新的だったとは言えません。同じ図面をコンピューターによって、より効率的に生成するというだけです。 
しかし、コンピューターはただ図面を電子化するためだけに使うより、はるかにパワフルなマシンです。建物データを直接コントロールするコンピューターソフトは80年代に既にニーズがありました。それは「バーチャルビルディング」や、「シングルビルディングモデル」のような言葉で表わされていました。現在では「BIM」や「アルゴリズミックデザイン」という概念になっていますが、基本概念は本質的には同じものです。3Dモデルを通して、建物データを直接コントロールすることです。しかし、「アルゴリズミックデザイン」と「BIM」ではフォーカスされる点が少し異なります。 
アルゴリズミックデザインの注目されるべき点は設計初期段階に建築家が考案するアルゴリズムによって建築形状がパラメトリックにコントロールすることが目的とされていることです。ライノセラスのグラスホッパーといったツールは、ユーザーが高度な数学的知識を持たずともグラフィカルにそのような建築形状を造り出すことができます。BIMの範囲はより広いものです。基本設計の枠に留まらず、建物のライフサイクル全体に及びます。さらに、BIMは設計だけに使われるものではなく、調整や様々なタイプの解析、そして当然今でも重要な2D図面の生成(少なくとも当分の間、必要となるでしょう)に使用されます。 
二つの目的が相反することなく共存することは想像に容易いです。私は将来的に「アルゴリズミックデザイン」と「BIM」が共に発展していくと考えています。BIMはアルゴリズミックデザインの生成物を包括的に受け入れます。そして、デザインにおいてポピュラーになりつつあるアルゴリズミックなアプローチはプロセス全体にわたって活用できるでしょう。 
私たちGRAPHISOFTはこれをゼロから始めるわけではありません。ArchiCADはユーザーがBIMデータのオブジェクトをパラメトリックにコントロールすることができます。しかし、この機能はすべてのオブジェクトで実装されているわけではなく、また、そのユーザーインターフェースは初心者には若干難易度が高いものです。しかし、その気になれば今でもGDLスクリプトを用いて驚くほど様々なことを、BIMデータをアルゴリズミックにコントロールすることができます。 
現在また将来のユーザーにとっても喜ばしいことは、BIMかアルゴリズミックデザインのどちらかを選ぶ必要はないということです。これら2つは1つになるものなのです。