2011年8月11日木曜日

AIDEA社のBIMマネージャー

このポストについて、もっと早く書かなくてはなりませんでしたが、最近はかなり忙しい日々が続いていました(もちろん良い意味ですが)。前回AIDEA社の組織とプロセスの詳細について紹介することを約束しましたので、早速AIDEA社のBIMマネージャーのシステムから紹介致します。このポジションはおそらくAIDEA社独自の配置となっていますが、このBIMマネージャーというポジションについては、どうやら日本でもホットな話題となっているようです。(5月にこのトピックについて書いた後、多くのフィードバックと質問を頂きました)
最初にAIDEA社には設計者”BIMオペレーターといったポジションは存在せず、 かわりに”BIM設計者だけであるという点が重要なポイントです。また通常、他の会社で多く見られるケースである、プロジェクトがモデルマネージャーに任命されるということもありません。それぞれ、全ての人が個々のデータを担当し、モデリングルールを遵守し、モデリングします。また、プロジェクト設計者はプロジェクト全体の品質管理および最終的なBIMモデルの調整を担当します。ここでも同様に、AIDEA社では建築設計とBIMモデリングは1つであり、同じものであるということです。
しかし、とりわけ注目すべき点として、AIDEA社にはBIMマネージャーが6名もいるのです。AIDEA社には5つのスタジオがあり、それぞれが15-20名程度の設計者で構成されており、それぞれのスタジオをスタジオBIMマネージャーが統括しています。頭が痛くなってしまう前に申し上げますと、このスタジオBIMマネージャーというポジションは専任ではなく、この仕事における業務の割合はほぼ50%となっており、それ以外は通常の設計業務を兼務しています。この役割として、専任のポジションとなるオフィスBIMマネージャーに報告をします。それでは、AIDEA社のBIMデザインプロセスの役割について見ていきましょう。



以下スタジオBIMマネージャーの担当する業務となります。
  • プロジェクトのセットアップ スタジオBIMマネージャーは新しいプロジェクト毎に積極的にセットアップに参加します。セットアップは常に重要なポイントとなり、適切になされれば後に多くの問題が回避されます。
  • 技術的なサポート スタジオBIMマネージャーはローカルの”BIMリーダーであり、何か問題があれば誰でも自由にスタジオBIMマネージャーに助けを求めることができます。
  • コンプライアンスのモニタリング スタジオBIMマネージャーは、BIMプロセスや会社のBIM規格への準拠を正しく実行するために、あらかじめ定義されたプロセスの特定の段階で各プロジェクトをチェックします。このプロセスは、"プロジェクト監査"と呼ばれています。
  • BIMの学習情報を統合 :各ユーザーは、会社にBIMノウハウをレポートするようになっており、これらの学習情報をまとめるのはスタジオBIMマネージャーが担当します。
  • オフィスBIMマネージャーへの報告 スタジオBIMマネージャーは定期的にプロジェクトチェックの結果を報告し、未解決のBIMの問題や会社におけるBIMの活用および改善案をオフィスBIMマネージャーに提案します。
スタジオBIMマネージャーは、オフィスBIMマネージャーが開催する毎週の定期的なミーティングに参加し、前週の問題点や、ユーザーが発見した新しい方法や改善点について話し合います。そこで、他のプロジェクトにも応用できるソリューションなどがあった場合、"ARCHITIPS"と呼ばれる、同社の内部ブログで公開することで、それを社内の"公式"とします。ミーティングでBIMマネージャーは技術的な問題についても話し合います。例えば、新しいオブジェクトの共有や、ソフトウェアアップデートの導入、BIMマニュアルの変更の承認など。
オフィスBIMマネージャーはもちろん、専任のポジションになります。また、オフィスBIMマネージャーは建築家でもありますが、この専任のポジションの在任期間は2年間となっており、その後は通常の建築家のポジションに戻ります。AIDEA社の社長、ジョジョトレンティーノ氏によると、設計者にこのポジションに就いてもらう際、一時的なポジションとすることで、専任のBIMマネージャーのこのポジションに対する懸念と責務の厳しさに燃え尽きてしまうことを避けることができるそうです。また、オフィスBIMマネージャーは"業務改善や品質保証を担当する部署"にも属し、AIDEA社での設計品質保証の担当者と一緒に業務をします。プロジェクトを成功させるためにはBIMモデルの質は全体的な建築の質から分離することができないものであり、双方が確約されなければならないというAIDEA社の信念を示しています。











AIDEA社の組織で、もう一つ顕著な特徴は BIMプロセスにおける人事部門との統合です。プロジェクト監査の結果は人事部門に送られ、BIMスキルの改善をモニタリングし、これが毎年個人評価の重要な一部となっています。 こういった背景により、社内のBIMの知識レベルが非常に高いことも納得できます。しかし、個々のスキルの高さが最も印象的であったというわけではありません。(もちろん、高い専門的なスキルをもった社員もいましたが、例えば高度なGDLスクリプティングができる社員はこの時点ではいませんでした)重要なのは、全体的な社員の質が高かったということです。AIDEA社では設計に携わるポジションにいる社員は、アルバイトから常務取締役(50歳を超える)まで全てBIMソフトの熟練者でした。
次回は、AIDEA社が実施している具体的な学習方法についてご紹介します。

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