2010年1月29日金曜日

ウィスキーと雪

恒例の年初のセールスカンファレンスが行われたブダペストから戻ってきました。会議ではとても興奮しました。グラフィソフトに復帰してから初であり、各国のグラフィソフト社支店の代表に会える機会となりました。お互いに話し合うこと、学ぶことがたくさんありました。会議では、弊社代表のビクター・バルコニーが「グラフィソフトの状況」について発表しました。弊社は公開会社の一部であるため明確な数字は開示できませんが、世界の経済危機にも関わらず弊社の業績は予想を上回り、財務的にも健全な状態にあることはお伝えしておきます。

90年代に、私が最初にグラフィソフトジャパンを経営していた頃、日本の顧客に重要と考える新機能の作成を開発チームへ要請する事が社内での評判となっていました。開発チームの苦労を少しでも埋め合わせするため、ハンガリーへ戻る機会にはいつもウィスキー(勿論モルトです)を開発チームへのおみやげとし、お礼をしていました。今回はこの習慣を再び始めることができるようになり、お礼する理由もありました。開発チームは非常な速さで新しいSolo版を作成しました。実を言うとこの製品は去年の開発スケジュールには全く入っていなかったので、2月1日にリリースしたいという意向を伝えた時点では私自身も半信半疑でいたのですが、最初の「交渉」としては良いだろうという程度に考えていました。しかし、驚いたことに希望通り完成し、プロジェクト関係者と会った際にグラフィソフトジャパン社員一同からの感謝の気持ちを伝えました。

ただし、ウィスキーを飲むために集まったわけではなく(約15人でウィスキーを分けました)、それ以上に日本での戦略や計画について興味を示しました。通常ソフトウェア開発者というのは会社の営業活動には興味を持たないものです。しかし、グラフィソフト開発チームの離職率が他社に比べて小さいせいか、開発チームは「子供」が市場でどのような反応を得ているか、製品開発に費やされた膨大な努力に見合った結果があるか知りたがるわけです。私は日本の計画について伝え、次にハンガリーに戻る際には(恐らく4月)またウィスキーを持って帰ることを約束しました。何のお礼でしょうか?すみません、それはまだ秘密です。。。
ちなみにブダペストはどうだったかというと、はっきり言って「寒かった」です。日本の人は「ハンガリーは寒い所」と言いますが、私はそう思っていません。ハンガリー人は寒いと思わないのです(寒い国、というのはハンガリーより北のところです)。ただし今回は、暖かい東京から行ったので、確かに何か違うということを認めざるを得ませんでした。道には雪が積もり、気温はほとんど氷点下でした。地球温暖化の影響はブダペストにはまだきていないようです。。。

2010年1月14日木曜日

「みんなのBIM」その答え!

明けましておめでとうございます。

去年の最後のブログでは、「BIMは大企業だけのものでなく、個人の建築家や小規模な設計事務所にも手頃な値段でBIMツールが必要」と書きましたが、そのソリューションについてはあえて触れませんでした。その時点ではいくつかの考えはありましたが、まだ計画、計算そして検討の段階でした。今、その答えが完成しました!




グラフィソフト社が、このバージョンを5年前や5年後ではなく、今発売するのはなぜでしょうか。小規模な設計事務所のための廉価版の発売は1990年代にも検討されていました。一番大きな問題は、低価格版とレギュラー版をどのように区別するか、という点でした。3D機能を外して、低価格の2D作図用のArchiCADを作るという案もありました。しかし、これは「作図する」のではなく、「3Dモデルから図面を生成する」というBIMコンセプトに正対する考えです。私はこの案に反対しました。数々の検討の結果、その時点ではArchiCADの製品の品質を落とすことなく外すことのできる機能がなく、時期尚早という結論に達しました。

その後、2008年には「STAR(T) Edition」(SE)と呼ばれる製品が日本でも発売され始めましたが、販売数は伸びませんでした。この製品は、作図機能を外したこと、レギュラー版へのファイル互換性に欠けること、またバージョンアップが保証されていないことなどが理由により、マーケティングツール以上のものを期待する日本の市場には向かなかったと思います。

しかし、その後完成した「ArchiCAD13 Teamwork 2.0」は生産性を飛躍的に向上するため、ハイエンドであるレギュラー版と低価格版を区別する理想的な機能であると考えました。チームワーク機能がなくてもArchiCADも利用でき、小規模な住宅プロジェクトなどでは必要とされることもありません。しかしながら、大規模物件ではチームワーク機能は非常に大きな効果があります。ゼネコンや大手事務所では、生産性を向上させるこの機能には付加価値があり、投資が無駄になるリスクはありません。

STAR(T) EditionArchiCAD13 Soloの基本的な違いは、Soloがレギュラー版へのアップグレードを視野に入れた「架け橋」を提供するのではなく、主要製品としてSolo用バージョンアップが保証されており、Soloから通常のチームワークバージョン(ArchiCADレギュラー版)への乗換えることなく使い続けることができるように開発されています。ArchiCAD Soloの機能詳細に付いてはここでは触れませんが(詳細はこちら)、ここで強調したいことは、全ての編集、作成機能が揃った「正真正銘」のArchiCADであるということです。更に重要な点は、レギュラー版と100%双方向のファイル互換性があるということです。

このArchiCAD13 Soloを商品化するにあたり、「ブダペスト本社の承諾」、という条件を満たす必要もありました。幸運にも、新しい若くて斬新なグラフィソフト経営陣は、日本においてArchiCADの販売を促進するためには、大規模な組織での成功と利益だけではなく、小規模な設計事務所でも市場拡大を図ることの重要性を十分理解しています。広い範囲に提供できる商品が必要とされているのです。Soloの価格帯はすぐに収入に繋がるものではありませんが、グラフィソフト経営陣はこの戦略を今後のArchiCADビジネスへの投資として理解し承諾しています。

正直に言って、今とても興奮しています。ArchiCADビジネスに携わるようになって以来、この考えを実行したいと考えていました。個人的に、本当のグラフィソフトジャパンの姿はここから始まると考えています。