2010年12月21日火曜日

年末のご挨拶

ヨーロッパでは、大雪に見舞われていて、空港は閉鎖されています。日本では、窓から景色を眺めるだけですが、少しずつ、年の終わりを感じさせます。赤坂の通りでは、そこら中で忘年会が行われていますが

私の立場だと、こういった時期には「私たちは前進したのか」と自問せずにはいられません。確かに、前進はしました。しかし、十分に前進したかと聞かれれば、社長としての答えはNoです。決して十分とは言えません。もちろん、期待はしていましたが。実際のところ、それほど悪いわけではないのです。私たちは、過去最高のArchiCADのライセンス販売を記録しました。内訳として、新規のライセンス数の多くが、今期新たにリリースした安価なSoloバージョンとなりましたが、ライセンスの総売上は着実に成長を遂げています。喜ばしいことに、この成長は日本支社だけのものではなく、GRAPHISOFT及びArchiCADOPEN BIMソリューションは世界中でシェアを獲得しています。

今年のハイライトとして挙げる事柄は、やはりBLTです。参加者チームが飛躍的な成長を遂げ、特に、多くのチームがArchiCADOPEN BIMソリューションをツールの中心として使って頂いた(全20チーム中10チームが使用)ことは、大変喜ばしく光栄なことでした。(また、3大会連続で、ArchiCADを使用したチームが優勝するという結果になりました。)

そして、今年の最も重要なステップは紛れもなく、Soloバージョンをリリースしたことでした。結果として、現在のArchiCADは、もはや大手ゼネコンや組織設計事務所の為だけのBIMアプリケーションではなく、中・小規模の設計事務所での導入も急速に広まっています。

また、本社からのサポートもあり、未来への投資として、新たな活気に満ち溢れた2名の人材を採用できたことも報告します。これは日本におけるBIMの利用が急速に進み、GRAPHISOFTがその役割を担う為です。

前述の様々な事柄により、来年は今年よりさらなる飛躍を遂げることができるでしょう。とはいっても、やはり多少の不安は残っていたので、事業計画とは別に、私は酉の市を訪れ、熊手を買いました。(オフィスの壁に掛かっています)何しろ、来年はうさぎ年で、私もうさぎ年なのです。(誰も知らないでしょうが

この場を借りて、お客様及び、いつもお世話になっている皆様方にお礼を申し上げます。ブログの読者の皆様も、いつもありがとうございます。

Thank you and Happy New Year!

それでは良いお年を!

2010年11月26日金曜日

「技術」と「法律」のガラパゴス

10月に私はグラフィソフト社が開催する日本とヨーロッパの大手ユーザーに向けた会議の為、ハンガリーに戻っていました(もう少し早く書けばよかったのですが、この時期は予算編成に加えて、このようなイベントがたくさんあり、非常に忙しかったのです)。ブダペストに到着した最初の2日間、まず、私たちは現地企業を訪問し、CEOから将来展開の話を聞き、グラフィソフトのソフトウェア開発者から直接、新技術の発表を聞き、そして、開発者とのラウンドテーブルディスカッションを開催しました。このディスカッションは、ユーザー同士、お互いに話し合う場という形にしました。参加者の皆さんも、このイベントの最も価値のある部分であったと感じているのではないでしょうか。

私にとって、このディスカッションで2つ、注目すべき結論がありました。まず、数年前まで顕著だった日本におけるBIM技術の遅れは、もはや見受けられなくなったということです。日本の参加者が使用しているソリューションはヨーロッパと比べて見劣りすることはなく、両者はお互いに多くのことを学んだのではないかと思います。しかし、これは日本での大手ゼネコンや大規模な建築事務所を例にした話であることを忘れてはいけません。小規模および中規模の企業の格差は依然として残っているように思えます。これらの企業のBIMへの意識や実運用は、米国、特にヨーロッパと比べると、大きな差が否めません。ヨーロッパの小規模な設計事務所はBIM利用が進んでおり、大手設計事務所に対しても十分競争力があり、小規模であるという欠点を意識しているため、技術力で勝っている場合さえあります。しかしながら、日本の多くの事務所はBIMを扱うことをせず、「大企業向けの話」という考えを持っているように思えます。このような考え方では、仕事を獲得する可能性(すなわち、経営継続の可能性)が競争激化する中では低くなる、ということに気付いていません。しかし、悪いことばかりではありません。私は大企業の内の少なくとも一部が、「技術」のガラパゴスから抜け出していることを嬉しく思っています。また、間違いなく多くの企業がこれに続くと思います。

ただし、ヨーロッパが明らかに先に進んでいる分野があります。私が以前主張したように、BIMの進歩は単に技術の進歩に依存しているだけなく、周辺環境である法律や商業体制を整備することが重要です。このような体制が整備されず、建設における関係者の情報交換が従来の印刷された図面の交換に限定されている限り、BIM2D図面を作成するためだけの情報となり、その進歩が遅れてしまいます。しかし、3D BIM情報が本来の形で情報伝達に利用されるようになれば、導入が大幅に高速化されます。私はこの変更が徐々に行なわれると予想しており、初期の段階でBIMデータは従来の2D図面を補完する情報として添付され(私が「ハイブリッドBIM」と呼んでいるものです)、徐々にデータ交換の主要な役割を果たすでしょう。当然のことながら、BIMデータがこのような役割を果たすようになれば、新しいデータ形態、役割、所有権、使用方法を盛り込んだものとして契約書を書き換える必要があるでしょう。これは決して簡単な作業ではありません。建設プロセスの基本構造の変化であり、業界を根本的に変えてしまうものです。ヨーロッパではすでにこの論争が起きていますが、まだ明確な結論があるとは言えません。時に矛盾するような様々な手法があり、BIMデータを含む標準的な契約書の数も増加しています。この変化が勝者と敗者を産むことになると思いますが、より積極的にプロセスに影響を及ぼそうとするものが勝者となるであろうことは言うまでもないでしょう。私は日本の建設事業の関係者は、BIM導入におけるこうした側面も力を入れる必要があると考えています。日本が「法律」のガラパゴスに陥らないためにも。。。

2010年10月14日木曜日

It's BLT-time again!

私は部屋に入ると、突然、年を感じました。部屋には25歳前後と思われる、若い人たちでいっぱいでした。そして、彼らの疲労を感じました。今夜は眠るのは数時間でも、もったいないというのが明らかでした。最新のコンピュータを除き、それはまさに私が通っていた古い東工大の研究室の締め切り前日のようでした。














しかし今、ここは研究室ではなく、BLTの二日目、大林組のSAFARI TOURチームの本部です。一年間はあっという間で、私たちはまた、この魅力的な技術祭りの真只中にいます。私は、設計チームのリーダーの一居さんに「なぜ『SAFARI TOUR』なのですか?」と尋ねました。すると彼は、「私たちはこれから地図に載っていない、まるでサバンナのような領域に向かうのです。まさに冒険だからです。」と答えました。














確かにその通りです SAFARI TOURチームは明らかに容易な方法を選んではいません。平面図でも壁はでこぼこしていて真っすぐな角度はほとんどなく、建物そのものも急勾配の坂に垂直方向に配置しています。スケッチするのは簡単ですが、モデルを作成するのは非常に難しいことです。 RhinocerosGrasshopperを使用してマスモデリングを作成し、その結果を3DS形式でArchiCADに下図として取り込み、詳細なBIMモデリングを作成します。

建物の一部は設計段階ですが、チームメンバーは既にBIMのモデリングに熱心に取り組んでいます。ArchiCADの「チームワーク」機能が共同作業を可能にしているので、作業も順調です。同時に、最先端の新技術(例えば、近々発売予定の生活産業研究所のArchiCAD上で実行できるADSBTおよびPALソフトウェアのベータ版)を使用してモデルの分析もしてます。また別の部屋ではエンジニアがIFCに変換されたファイルを基に、構造および設備設計に取り組んでいるようです。「OPEN BIM」は単なるコンセプト以上のものになっています!











SAFARI TOURはもちろん、勝利を望んでいます!」「しかし、結果はともかく、新しい技術や物事を成し遂げるための新しい方法を学ぶことだけでも素晴らしいことです」。確かに、それがBLTの素晴らしいところです。明確な目標があり、期限と熾烈な競争があり、しかしながら、リスクの少ない実験の場面なのです。結局のところ、最大の勝利はチームが後に実際のプロジェクトで経験を生かせるかどうかなのです。

2010年10月12日火曜日

ArchiCAD 13の裏話

再び誕生日パーティーです。本日、私たちは新しいバージョンのArchiCAD 14の誕生を祝っています!

ソフトウェアの寿命は、大変短いものです。ArchiCAD 13のリリースはたったの1年前ですが、私たちはすでにお別れを告げることとなりました。*1
13も、もちろん革新的なバージョンでしたが、新しく生まれ変わる時です。















ArchiCAD 13から14へのバージョンアップと共に、今日は13にまつわる裏話をお話しましょう。西洋では、「13」は不吉な数として考えられています。事実、13番を含む多くの不幸な出来事が起こっています。最も有名なのはアポロ13号の事故です。あるいはこの業界では良く知られているあるCADソフトウェアの13番目のリリースも悲惨だった事を覚えておられるかもしれません。

ArchiCAD 13のリリース前には、ブダペストでバージョンの名前についてどうするべきか、様々な議論がされていました。「13を飛ばして14にするべきでは?」、「例外として、とりあえず他の名前で呼んでみては?」、それとも、「一旦番号は辞めて、主流になっている年号スタイルにしてはどうか?(Windows'97のように)」…私たちはこの問題を、グラフィソフトにとっての不吉な数字というより、第一にお客様を非常に心配していました。もし万が一、お客様がこれを不吉と考え(結果として購入をためらうなら)、これはやはりグラフィソフトにとっても大問題なのです。















しかし、最終的には13という数字のままに決めました。私たちはそのようなリスクを恐れている会社ではないと考えています。結局のところ、私たちは常に危険と戦っているのです。ささいな事に恐れることはないのです...そして1年経った今、ArchiCAD 14 が13に取って代わり、それは良い決断だったと言って差し支えないでしょう。なぜなら、ArchiCAD 13は過去のバージョンの中で、最高の売れ行きを記録したからです(日本を含む全世界で)。この記録もそう長くは続かないと確信していますが...

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*1 もちろん引き続き、ArchiCAD 13と12もサポートして参ります(常に2バージョン前までのサポートを実施しています)。

2010年9月21日火曜日

BIMへのハードランディング

「それは出張の時でした」とジョジョ氏は説明します。「事務所から連絡がありました。『社長!もう大変です!』でももう元には戻れません。全てのコンピューターからAutoCADをアンインストールするように指示し、念のためIT室にパッケージだけ残させたのです。」
AIDEAフィリピン社の代表アベラルド・「ジョジョ」・トレンティノ氏のプレゼンには驚かされました。ジョジョ氏のメッセージは、私が日本においてBIM普及のために宣伝してきた内容と正反対だったからです。つまり「大手では徐々に導入し、会社全体で一度に移行しないでください」というものです。私はずっと間違ってきたのでしょうか・・・?

8月に、フィリピンのセブで行われたグラフィソフト社主催の年次アジアパシフィックパートナーカンファレンスに出席しました。AIDEA社は招待講演者で、アジアのビジネスパートナーに対するBIM導入事例を紹介していました。BD World Architecture (WA)のリストによれば、現在AIDEA社は世界100位に入る大手建築事務所で、92名の設計者が在籍しています。8年前に設立された事務所にしては素晴らしい功績です。

トレンティノ氏によると、
BIMを戦略の中心にしていなければ実現しなかったとのこと。AIDEA社のこの劇的な決定を行った理由は2005年にまでさかのぼります。会社は急成長していましたが、緊急な対応が必要とされる不安の兆しがみられていました。優秀な人材の維持ができない、納品物の品質と精度に関する不満、より低い金額での地元企業からの競争が激しくなっていることなどです。

2Dは時代遅れ」で「BIMの導入は必須」とトレンティノ氏は認識したのです。
評価や試行プロジェクトを
RevitArchiCADの両方で行ない、ArchiCADの使用を決定しました。しかし、移行は想像以上に時間がかかりました。研修を受けましたが、締切間近になると設計者は2Dシステムに戻る傾向がありました。
ある時点でトレンティノ氏は「
BIMを使っている時間がありません」という言い訳にうんざりし、この習慣を一気に断ち切ることを決定しました。IT部門に60日間を与え、全てのコンピューターからAutoCADをアンインストールさせたのです。
その時点では、この決定は全員が好んだわけではありませんでしたが、AutoCADカットデー(終了日)がやっててきて、一切の妥協は許されませんでした。ただし、熱心な準備と研修にも関わらず、移行の最初の月には効率が約40%落ちました(物件に費やした作業時間による比較)。埋め合わせるために社員は長時間働きましたが、結果としてこの数字は次第に改善されました。3ヶ月目には効率性が元に戻り、6ヶ月目にはBIMがはっきりと結果を出すようになりました。「やるべきことだったと思います」と導入チームのリーダーであるアルボレーダ氏は語ります。
「とはいえ、それまで誰もArchiCADを知らなかったので、困難なことでした。もう一度やるときには、移行時期には習熟者を採用するべきと主張するでしょう。今では移行も完了し、満足しています。」どれほど満足しているのでしょうか?
「今では完全に
BIMを実践しており、以前では6人で3ヶ月かかっていた作業を2人で2ヶ月で行っています。」と社長は誇らしげに語ります。品質と生産性が明らかに向上したことに加え、BIMを使用することでプロジェクト整合性確認など新しいサービスを提供できるようになったといいます。
この場合、デベロッパーや施工会社が
AIDEA社に発注するのは、他の設計事務所が2Dで作成した設計図書の検証です。AIDEA社は図面からBIMモデルを作成し、不整合を発見して対策を提案します。
最後に、私にとって大きな疑問が残っています。
このいわば「ハードランディング」的な移行方法を皆さんにお勧めするべきでしょうか?同じような移行事例は日本にもあり(特定の日に従来の2Dシステムをアンインストールすることも含め)、このような劇的な手法は移行過程を大幅に加速し、2D作図に戻る可能性を排除することは事実です。移行後の効率は非常に高いため、短期間の移行が企業にとって重要なことは間違いありません。この視点からは、確かに良い方法と言えるでしょう。ただし、このような「高速移行」に着手する前に以下の条件を満たしている必要があります:
  • - 研修と機材更新を含む、徹底的な準備
  • - 短期間の(13ヶ月)生産性低下に耐えられる、安定した経営状態
  • - 20人につき1人の上級ユーザーを(契約)雇用できることが好ましい

最も重要な点:
  • - 経営者からの非常に強力で揺るがない支援
上記のいずれかでも、特に最後の点が欠けているなら、ソフトランディングの方がゆっくりかもしれませんが安全な方法でしょう。迅速な移行は、同時に「ハードランディング」にもなりえるのです。

2010年9月13日月曜日

Power User Conference 2.0

今、私たちは"Web2.0”世代にいて、その流れに乗るために、先日行われたパワーユーザーカンファレンスでは、Twitterのハッシュタグ「#AC14」を事前に決め、トークセッションでのパネリストへの質問や感想などにTwitterを活用することにしました。

初めての試みだったので、完璧ではありませんでしたが、(教訓:Twitterのタイムラインの文字は大きく!最後列の方からも読めるように!)イベントの後半からは、スクリーン上にTwitterのタイムラインをそのまま表示しました。おもしろい意見や、質問が飛び出し、トークセッションの中に盛り込みました。


東京会場@スパイラルホール

いくつかピックアップしてみますと・・・
・ツールが世の中を変えられるのか
shiofoot

・ツールが世界を変えられるか…ツールでコミュニケーションは変わると思いますね。 BIMでコミュニケーションは変わった
o_maijyo

・宮倉さんに質問なんですが、導入後、作業時間は変化したのでしょうか?
arai_masato

・作業時間の変化→多少軽減できているのでは。御回答ありがとうございました。
arai_masato

・BIMの目的は作業時間の軽減ではない。合意形成等のコミュニケーションツールだと考えるべき
o_maijyo
 
・宮倉さんは今後2Dと3Dどちらでも良いと会社から言われたらどっちを取りますか?

saepapa123

当日の関連ツィートをご覧になりたい方は、大阪と東京それぞれの会場ごとにまとめたページをご覧下さい。

9/1 大阪会場: http://togetter.com/li/46862
9/3 東京会場: http://togetter.com/li/48802

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  • @GraphisoftJapan : 我々のオフィシャルなアカウントです。このアカウントをフォローすればグラフィソフトの最新ニュースを逃すことはありません!
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最後に今回の私たちの「PUC2.0」を盛り上げたTwitterの実況をしてくださった@orihihs0yさん、@jakkal0623さん、@yukio19さん、@shiofootさん@arai_masatoさん他のみなさん、ありがとうございました。

2010年9月8日水曜日

原さんの思い出

原さんは行ってしまいました。

この文章が意味するのはドアを開けて、出張か休暇に行ったかのようですが、もう戻ってくることはなく空席だけが残ります。

最初に原さんにお会いした時、部屋に入ってきて大きな笑顔で若々しい自信をふりまいていました。そうです、実際若く、20歳近く年上にも関わらず、私よりも活動的で力強い方でした。この物理的そして精神的な力の組み合わせが彼のトレードマークでした。私がグラフィソフトジャパンを1999年に退社しても、安心出来る人に会社を引き継いでいただいたと感じていました。


8年間グラフィソフトジャパンの社長として勤務されていた間、東京やブタペストなど色々な場面で一緒に働く機会があり、原さんの仕事に、社員に、グラフィソフト社に対する献身と集中をいつも尊敬していました。ブタペストの社員も、原さんはこの仕事を遥か昔からしているように感じていました。ほとんどの社員の採用、現在の事務所の契約、多くの顧客とのつながりなど、現在のグラフィソフトジャパン社の大部分が原さんの偉業です。今でも原さんの努力の結果を刈り取っているだけのように感じる時もあります。とにかく原さんの思い出を残す最善の方法は、その仕事を継続することです。

最後に原さんにお会いしたのは数カ月前のことで、一緒に仕事の打ち合わせをしていました。打ち合わせ後、コーヒーを飲みながら次の予定について話していました。いつも通り楽観的で、心配事は次のテニストーナメントでは最終戦に残る可能性があるので、その準備でとても忙しい事ぐらいだ、と言っていました。残念ながらその予定が実現することはありません。原さんについて、色々ありますが1つ確かなことは、グラフィソフト社では負けたことがないテニスチャンピオンとして忘れられることはありません。

永遠に。

2010年8月9日月曜日

愛の物語

「私はPC少女。彼はMacさん」。ここからマリアナの話が始まります。イタリアの少年がアメリカの少女と出会い、恋に落ち、結ばれます。二人とも建築家であり、結婚にあたり部屋の共有だけでなく、職場も共有することになります。そして二人でEMUアーキテクツ社を立ち上げます。しかし、そこでいくつかの疑問がわきます。その中の1つがどのOS、どのCADシステムを使うかというものです。

二人はMACとArchiCADに決めました。小規模なヨーロッパの事務所では人気の高い選択です(EMUアーキテクツ社は北イタリアにあります)。さらに興味深いのは、その結論に至る理由です。愛とは異なり、その選択は理論的でした。OSに関しては、Macは価格の割に効果が高く、損するものはないと結論しました。Windowsの互換性はもはや問題とはならなくなりました。
「Macへの投資を最大限活用するというこの需要な決定が、最終的にハイエンドソフトウェアの自由度を利用できる結果となりました。」
CADソフトウェアの選択に関しては、「いままでのやり方」が非常に無駄であることはよく理解していました。エンリコさんはこう語ります。
「2D CADを使って実際のデザインや詳細を行って、レンダリング用に3Dモデルを作成し、別のスプレッドシートを使ってプロジェクトの費用、建材数量、要素一覧などを計算していました。この全てに非常に時間がかかっており、エラーの原因となっていました。」
二人が以下の結論に達したのも驚くにはあたりません。
「疑問を解決するための検証し、この業界でBIMソフトウェアを使用していない人は全く愚かだ、という結果に達しました」
日本では、BIMは「大手だけが手に入れられる」ものととらえられ、小規模事務所において軽視される傾向がありますが、この論議がひっくり返っているのは興味深いことです。BIMは小規模事務所が大手の影響力のある事務所に立ち向かう唯一の最善の方法です。
「これにより二人でも、AutoCADプロジェクトで複数の人が行っていたのと同じ時間で全てのことを完成できるようになりました。できた余った時間でレンダリングや他のやりとり、プレゼンテーション資料を行うことができます。」
この二人の若手建築家がBIMの利点をはっきり理解しているか読むと、ヨーロッパやアメリカで小規模事務所が最も熱心にBIMを推進しており、保守的で、変化に弱く、2Dテクノロジーにしがみついている大手事務所に常に挑戦していることが理解できます。面白いのは、日本でもこのような競争環境は同じなのに、小規模事務所が自分たちに必要なことを認識するのに躊躇していることです。

エンリコとマリアナの話しに戻りましょう。「めでたしめでたし」となっているでしょうか?そうだと思います。ウェブサイトにポートフォリオを載せる時間もないほど忙しいようです。
OSとCADの選択、そしてエンリコのArchiCADの検証に関する記事(英語)はこちらをご覧ください。

ちなみに、EMU社のブログには、
LightworksやArtlantisを使用したレンダリングの方法や、一般的な建築に関する他のいろいろな情報もあります。

2010年7月28日水曜日

哺乳類の時代

Aさん(年齢:50歳)BIMについて話していた時、残念なことに彼は好ましい意見は持っていませんでした。「以前3D CADを試しましたが、その結論として3D CADはあまり役に立ちません」というものでした。この消極的な態度はどこから来るのでしょうか?Aさんの態度は日本の建設業界では典型的だと言えます。そして、これに答えるには、日本のCAD開発の不思議な時代に戻らなければなりません、「3D恐竜の時代」にです。

80年代後期から90年代初期の建設業界の雰囲気は「3D CAD」で満ちていました。新しくコンピューターを所有する人も多く、たくさんの3D建築CADシステム」が販売されているのを見て本当にびっくりしました。私は当時学生で、その後も若手設計者として、3D CADの値段について問い合わせたところ、高価な自動車と同等の価格で販売されていることを聞いて、諦めてしまいました。いずれにせよ、私のMac上では起動しませんでしたが。

その後、94年にグラフィソフトジャパンで働くようになり、身近に3Dシステムのいくつかの製品を見る機会がありました。最初に見たときはどれも印象的で、全てが自動で、クリックすると部屋が完成し、もう一度クリックすると全ての壁が立ち上がります!3回目のクリックでは屋根が完成し、全ての梁と垂木が正しい位置に配置されています!確かにとても納得できるものでした。ただし、「この屋根構造を少し変えることはできますか?」というような質問をすると、大体答えは「いいえ」でした。驚くことではありませんが、融通の利かない直線的な設計プロセスを前提にすればこのような操作性も簡単に実現できますが、高度な自動化は極端に自由度のないものになり、デザインの自由度は非常に制限され、ささいな変更の可能性もなくなります。これは恐竜に似ているので、私はこのようなシステムを「恐竜CAD」と呼んでいます。大きくて、動きが遅く、変化に対応できないという意味です。もちろん絶滅してしまうわけです。

しかし、初期のIT活性期やお金が溢れていたバブル時代には、この欠点の大部分が気づかれず、多くの設計事務所や工務店はCADシステムに投資し、全体としてしばらくはこのようなシステムは非常によく売れていました。ただし、金銭的な成功は顧客満足度を保証するのもではなく、CADシステムが実際に使用され始めると、制限がすぐに明らかになり、約束された改善が実現することはありませんでした。そこでAさんのような人は何も残らずがっかりし、その後どんな「3D建築設計システム」を見せられても、とても懐疑的になってしまったのです。すでに恐竜CADはほとんど絶滅しているのに、その影がまだ日本のBIMの普及に関して大きな障害となっています。

しかし、Aさんをなんとか説得して最近の「3D CADシステム」を見せたところ、純粋に驚いていました。すでに設計の最終段階においても部屋の高さや壁の厚みなど基本的な事を変更できる事に目を疑っていました。「私が知っている3D CADとは確かに違う」と彼は言い、その後はArchiCADで自分のBIMスキルを熱心に向上しています(ちなみに以前の「恐竜CAD」に比べてはるかに安価です)。しかし、日本には、まだたくさんの「Aさん」がいて、恐竜の存在をまだ信じています。私たちは彼らの目の前で教える必要があります。今は「哺乳類の時代」である事を・・

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*面白い点は、この現象は日本でのみ起きたことです同じようなアプリケーションは他では見たことがありません

2010年7月15日木曜日

新しいバランス?

日本のBIM市場に新たに関わるようになってから1年が経とうとしていますが、ゼネコン(日本独特の企業形態)と建築事務所ではBIMに対する姿勢がはっきり異なることが分かってきました。一般的にゼネコンはBIMに対して熱心に取り組んでおり、生産性を改善するための長年期待してきたソリューションとして、導入に対しても迅速です。これに対し、建築事務所の姿勢は積極的なものではありません。例外もありますが、どちらかと言えばためらっているようで、いずれ来るとは思っているものの、どうしても避けられないという状態になるまで待っていたい、というのが大半です。後々導入してからも、現状をできるだけ壊さないように、初期のデザインとプレゼンツールとして使っています。

この理由としてあげられることは、「フロントローディング」の考え方にあると思います。この考え方では、従来の2D手法の代わりにBIMを使用すると、作業の負荷が工程の初期段階に大幅に移行することになります。例えば、確認申請段階ではなくコンセプト段階で正確な床面積を出すこと、実施設計段階ではなく確認申請段階で設備構造との整合性を図ること、施工会社が現場の図面で修正し解決していたような詳細の作業を意匠設計で3D断面詳細を利用して解決することなどです。この結果として、一方では各段階での作業負荷は増えるのもの、他方では全体の作業負荷が減り、さらに重要な点として、意匠と設備・構造設計者間の初期の段階で問題を発見でき、より簡単に、また適切にこれを解決することができます。実際、図面上で配管と梁の干渉を解決できれば、発注内容の修正、作業の再割当て、施工完了部分の解体よりもはるかに安価になるのではないでしょうか?














ゼネコンはその存在が「デザイン・アンド・ビルド」であるため、工程の全ての部分の責任をもっており、施工段階でのコストを削減することで大きな利益を上げていると言えます。今ゼネコンがBIMを熱心に推奨していることにもうなずけます。設計事務所は施工で費用を削減することによる利点はないと言えますし、施工図面はゼネコンが作成している場合もあります。しかし、だからといって設計事務所にとってBIMの導入は作業が増えるだけで、施工会社が実感できるような利点はないのでしょうか?

そんなことはありません。建築事務所でも実際にフロントローディングは起きており、同様に利点も感じています。BIMのフロントローディングはどんな会社の必要にも合わせて簡単に最適化できます。
以前は確認申請段階で行っていた決定を基本設計に前倒しすることで、確認申請で様々な効果があります。確認申請部分に注力を注ぐことで、実施設計がより円滑になります。同等の品質の成果物をより少ない作業で完成させることだけが目的であったとしても、BIMで解決できます。でもそこで終わらせるのではなく、さらに良い品質を求めることはできないでしょうか?基本設計段階でも設計やその一部を3Dにし、施工用に3D詳細を作成することで、施工者が現場でなんとかするということではなく、設計通りに建物が建てられることを確実にできます。

しかし、企業は誇りだけで存続するわけではありません。建築事務所がより質の高い設計図書を提供すれば、当然の報酬が必要です。まずは施工会社から「ようやく仕事が正しくできるようになったことになぜ支払いが必要なのか?」と抵抗されるかもしれません。実際設計の問題で起きる障害、費用追加は頻繁に発生し、施工会社にとって費用面での損失が起きるからです。しかし、この論議は成り立ちません。資本主義では、他の人よりも価値を生み出すことが出来れば、遅かれ早かれ認知されるものです。プロジェクトがより整合性が高く、建設の問題が少なく、施工会社にとっても利益を生み出すことができれば(例えば保険費用を押さえるなど?)、これを実現した人たちと利益を共有する必要があるのです。高額の設計費なのか契約料なのか(施工会社も整合性の取れた図面を安定して提出できる事務所を好むのは当然です)は今後の問題であり、BIMの普及が広まれば遅かれ早かれ間違いなく設計事務所と施工会社間の関係が調整されていくでしょう。














ここまでの話にはいろいろな問題があるようにも聞こえます。現状どおりで問題ない、壊れていないものをなぜ直すのか?「自分だけは例外になれませんか?」と言うかもしれません。もしかしたら、しばらくの間はそうかもしれません。より整合性が高く費用を抑えられるのであれば、誰かが間違いなく始めることは想像出来るでしょう。設計事務所全てがBIMが提供する手法を導入することをためらっていると、ゼネコン側から「自社設計」という競争力が増加することでしょう。実際すでにゼネコンは自社設計施工率の量が増えており、BIMを活用しない分断した作業から出る問題が減っている、という報告もあります。とはいえ、独立した建築事務所なしでは建築や国全体が質の低いものになります。よって、上記のような「新しいバランス」は望ましいだけでなく、業界にとって必須だと思います。

2010年7月2日金曜日

オープンBIM

徐々に明らかになってきていることですが、BIMに関して根本的に異なる2つの考えが見受けられます。1つは独占的なソフトウェアシステムを促進するもので、もう1つは別々のメーカーが開発している多種のアプリケーションを連携しようとする動きです。前者の例はRevitシリーズにはっきり見られます。後者の例は弊社が「オープンBIM」と呼ぶもので、ArchiCADを中心に多種のソフトウェアを連携させるというのが一番良い例でしょう。

前者の独占的な手法の主張は、建築、構造、設備の分野を密接に統合させるにはこの3つのアプリケーションは同じメーカーで開発されるべきだという意見です。しかし注意して聞くと、この3つの分野は同じデータを共有しているわけではなく(実際データは参照されているだけ)、同じ独占的なファイル形式を共有しているだけということが分かります。全ての関係者が同じバージョンを使用していれば(コンサルタントと設計会社が同じ会社とは限りません)、少なくとも視覚的に似たようなソフトウェアの箱が棚に並んでいるので、このソリューションは完全に結合した印象を与えます。しかし、BIMはゲームのように3つの同色ポイントを集めれば、ライフやエキストラパワーが増えてレベルアップできるものでしょか。それとも、BIMはこのような曖昧な印象やマーケティングキャンペーンによって決めることのできないもっと複雑なものなのでしょうか。

オープンBIMについて論じる前に、認めなければいけない点もあります。それは異なる分野が円滑にまた簡単に連携するためには、共通のファイル形式が絶対に必要だという点です。

オープンBIMでどのようなことが実現できるか見てみましょう。

オープンBIMは高品質

まず最初にオープンBIMは、個々の分野で最適なアプリケーションが選択できるようになります。以前このブログに書きましたが、建築、設備、また構造は同じ物、つまり建物を作っているわけですが、それぞれの分野は根本的に違います。弊社は建築の分野で20年の経験を持っていますが、世界各国で手法が全く異なり、設備や構造エンジニアリングではさらに異なる規定や基準があることを認識しています。ですから、それぞれの国、地域または業務の種類に合った最適なツールの使用を可能にし、結果として最高品質の建物を保証できるのは「オープンBIM」だけであると弊社は考えております。

オープンBIM柔軟

よく言われることですが (しかも事実ですが)、各企業にはそれぞれ異なる独特なやり方があります。ですから、BIMを導入する正しい方法が「1つしかない」と考える理由があるでしょうか。BIMの導入に成功している数々の例を見てもそれぞれのやり方は異なります。

病院設計を専門とし、80以上のArchiCADを使用している米国カリフォルニア州の大手設計会社の例では、実施設計まではRevit Structure、その後は2DAutoCADを使用している構造外注業者と作業を行いました。建築分野でArchiCADRevitは競合しているわけですが、弊社が新しく開発したRevitアドオンを使用して、IFC経由でArchiCADRevit Structure間の連携が可能になりました。一方、設備外注業者はBIMソフトウェアを導入しておらず最後まで2DAutoCADを使用しているので、ArchiCADの信頼性の高いDWG出力を利用しています。










別の例は、フィンランドの大手建設会社で、この会社では基本設計段階では全ての分野でArchiCADを利用し、後の段階で他のアプリケーションに切り替えます。構造設計はTekla StructuresTeklaはフィンランドで開発されている)、そして設備設計にはMagiCAD(スウェーデン製品)を使用しています。どちらの場合もデータ変換はIFCによって問題なく行われています。










日本の前田建設工業株式会社では、ArchiCADTekla Structures、設備設計にはBE-Bridge経由でダイテック社のTf@sを使用しています。一方、国内の他の大手ゼネコンでは設備設計ツールとしてRebroが利用されており、BE-Bridge *経由でArchiCADと問題なく連携しています。

全体として、各企業には全く異なる組織構成があり(社内エンジニアを使う会社もあれば外部契約を好む会社もある)、長年使用してきた必要不可欠なソフトウェア、導入への対応速度(「ビッグバン」的な移行を好む会社と段階的な移行を好む会社)なども異なるのです。オープンBIMシステムを利用することにより、各企業にあった速度とツールを選択することができます。さらに、バージョンに制限されることもありません。独占的ツールとは異なり、IFCを採用しているBIMソフトはバージョンが異なっていても円滑に連携を図ることができるのです。これもオープンスタンダードの有利性といえます。

オープンBIMは安全

ハードウェアとソフトウェアは高価なものですが、それでもデータの価値に比べればほんのわずかです。特にBIMは莫大な量の情報を圧縮して保存できるので、BIMデータに関してこの点はより真実です。データのアーカイブ記録として、IFCのようなオープンで国際的に認められている非独占の形式を使用するなら、1つの会社のポリシー変更に影響される独占的な形式よりも安全といえます。IFCはオープンBIMシステム連携の核であり、その品質と信頼性を保証しているのです。結果として、データをIFC形式にすることで、将来的にいつでもバージョンに関係なく保存してアクセスできるのです。

最後に個人的なことですが、私はハンガリー出身で、共産主義時代の40年間は政党の選択、見る映画、使用する製品は決定されてきました。選択の自由を強く信じていることに疑問の余地はありません。

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*弊社は両メーカーとIFCを経由した連携を可能にするため現在共同開発を進めています。

2010年6月25日金曜日

日本, おめでとう!

これはBIMのブログで、建築、ソフトウェア、その他専門的なことを扱っていますので、相応しくないかもしれませんが、ワールドカップにおける日本の素晴らしい勝利について喜びを隠せません。素晴らしいプレイでした!この勢いに乗れば、いいところまで行けるでしょう。行けると信じています!











勝利を祝うために、簡単なツイッターゲームを行うことにしました。参加いただければ ArchiCAD Solo が賞品ですので、ぜひ GraphiOsaka ツイッターサイトをご覧下さい!

日本、頑張って!

2010年6月23日水曜日

ハイブリッド車とBIMテクノロジー

最近次の様な会話をする事が多くなっています。「それにしても、なぜグラフィソフト社は図面に対して積極的なのですか?図面は紙を使用していた古い時代の遺産で、過ぎ去っていく傾向にあり、コンピューターテクノロジーが成長しても刷新されない2D作図ソフトウェアによって寿命がほんの少し延長されているだけではないでしょうか?今は、BIMの時代であり、過ぎ去りつつある2D作図の世界は古い世代のCADソフトウェアに任せて、3Dモデルに集中するべきです!」

確かに、3Dモデルがデザイン意図のコミュニケーションの中で直接利用されている事例がどんどん増えています。コンサルタントとの擦り合わせ会議、建設現場での複雑な細部、施主プレゼンテーションなどで、BIMソフトウェアを使用している建築家が印刷した図面の必要がないと感じる事も多くなっています。その代わりに3Dモデルを直接使用して、アイディアについて説明や検討もしています。そもそも、図面はコミュニケーションの手段であり、それ自体は目的ではなく、重要なのは建物です。建築図面は、建設過程において他の全ての参加者が建築家のアイディアを確実に伝えるために発明されたものです。他のものがこの役割を満たす事ができれば、図面はなくなるはずです。

けれども、そこまで実現しているでしょうか?あるいは、論理的に近づいているでしょうか?「もはや図面と呼ばれる古い考え方のものは気にしないで、輝かしい図面のないペーパーレスな未来に集中しましょう!図面が必要なら、古い2D CADを使用してください」と大胆に言えるでしょうか?一部の競合製品はこのソリューションに傾倒しているようですが、弊社はそのようには考えていません。その理由をご説明する前に、他の業界について少し考えてみましょう。

まず、個人的にハイブリッド車テクノロジーに関する論議は不思議であると思っていました。結局のところ、全ての人がこれは解決策でないと知っており、ゆくゆくは自動車を実際にクリーンで完全に電気に切り替える必要があります。このテクノロジーは非常に進んでおり、一部は商業利用に準備が整っています。なぜ自動車業界は何千億円も投資して、恐ろしく複雑で高価で、色々な意味で実際的でなく、数年後には間違いなく過去のものとなるハイブリッドテクノロジーを搭載した新しい自動車クラスを作成するのでしょうか?この投資は本当のソリューションの開発に費やすべきではないでしょうか?内燃機関エンジンのような100年続く様な技術です。

しかし、技術開発が直線的である事はほとんどありません。自動車産業でも他の産業でも、パラダイムの変化は難しいと言われており、その主な理由は機械(あるいはソフトウェア)の難しさではなく、その周囲のインフラです。電気自動車の場合、バッテリーの取り替えや充電できる「電気スタンド」がなかったり、事故や故障の場合に修理するために十分整えられた修理工場がない、そして成熟したビジネス環境、細かい点で新しいテクノロジーをサポートする準備の出来ている企業がないと言った事が上げられます。ドライバーの「心と思い」も同様に準備ができていません。ガソリンの匂い、旧式の車の低い回転音に愛着を感じ、電気エンジンの未来的な音に直感的に嫌悪感を抱き、実体のない電気に頼る事を恐れるのです。ですから、ハイブリッド車は新しい時代への完璧な布石なのです。電気エンジンへの依存は徐々に大きくなり、ガソリンスタンドでもバッテリーの充電が可能になり、アクセサリーやサービスを提供する会社も増え、電気エンジンの鋭い音への違和感が無くなるような布石がなければ、パラダイムシフトは決して起きないでしょう。

BIMについても同じ様な現象が起きてきます。図面ベースの社会を完全に置き換える可能性を秘めたテクノロジーは既に存在しています。しかし、その周辺環境は、ほど遠い状態です。

そのひとつは、技術的な環境です。ポータブルコンピューターは建設現場で大規模なモデルを処理できるほど高速になり(会社でのスピードにもまだまだ満足していません)、ネットワークも大量のデータを転送できる速度になり、重要な点として、そして認めなければならない点として、BIM開発会社もソフトウェアの調整を行わなければその日はこないでしょう。

もうひとつは、「意識」の欠如は最も重要かもしれません。建築家がディスク上の3Dモデルを現場に持ってきて「これが作りたい」と言えるようになるまでには、大量の学習、思考の劇的な変化が必要でしょう。ただし、私が一番の障害と思っているのは、施主、建築家、コンサルタント、施工会社間のビジネス取引の基礎となっている法的な環境です。参加者間で責任を細分化しているこの環境は、数百年かけて進化してきており、間違いなく2次元図面に基づいています。全体的に受け入れられ、法的に拘束力があり、検査可能で、信頼性の高いデータ形式は何でしょうか?2Dの紙上図面と同じように簡単に読め、保存でき、確認できるものは何でしょうか?これを定義することは、想像以上に難しく、時間がかかり、重要な点として、段階的なプロセスです。

ですから、私の予測として図面はもうしばらく残り、今後、目にする変化は3Dの世界に勇気を持って飛び込むというよりは、ハイブリッド車の様な流れになるでしょう。3Dモデルの使用は徐々に増加していくでしょう。そして、古き良き「音のでる」2D図面と平行して進んでいくでしょう。ただし、同時に、2Dの詳細、断面の切り出し、一覧表の作成を徐々に減らし、同等の3Dの「ライブ切り出し」などデータを効率よく使用する必要があります。同時に、BIMモデルのおかげで、モデルから直接生成され不整合もおのずと削減されるので、図面の品質も比べ物にならないほど向上するでしょう。しかし、現状を直視し、認める必要があります。未来はもう来ているのです。

まさに「ハイブリッドBIMテクノロジー」と言ってもいいでしょうか?